「ちゃんとやる」の解像度を上げていく
借金玉:つまり、「必要な本がいつでも出せる状態」とは、どういう状態なのか。自分にとっては、どこまで整っていたらOKなのかを、自分の頭で考えさせるようにしていく。適度にちゃんとしていたほうがいいのは間違いないので、「さて、この場合の『ちゃんと』とは何か、考えてみよう」と。そういう高度なメタ思考を促す働きかけは、すごくいいと思います。
まず具体的なことをさせてみて、そこから「自分に必要なことは何か」ということを考えさせる。そういうスタイルをとってもらえたら、僕も本当に助かっただろうな、と。なぜかというと、発達障害は個別性が非常に高いからです。もちろん僕が本に書いたことも含めて、「こういうやり方が効きやすい」というのはありますが、大切なのは本人が自分自身を理解することです。
確かに、当事者の方々にお話をうかがってきて、みなさんいろいろと違いがあると感じています。
借金玉:その違いを高い解像度で理解する。「自分は何が苦手で、何が得意」という解像度より、もっと上の解像度。何にこだわりがあり、どこに思考のバグ(不具合)があって、どんなときに合理的ではない行動をしてしまうのか。周囲の人にとっても、そこを理解していくことが重要だと思います。
整理整頓されていないモノは無価値
発達障害に対応するライフハックとして、片付けを重視されていますね。
借金玉:ADHDの傾向が強い人は、モノの管理に困ることが多いからです。大抵、考え方からして間違っています。「モノは存在しているだけで価値がある」と思っている。でも、実際はそうではありません。だから僕は、「整理整頓されてないモノには、価値がない」ということを何度も伝えています。
整理整頓をされてないモノには、価値がない。
借金玉:典型的なのがゴミ屋敷です。ゴミ屋敷って、モノがいっぱいあるじゃないですか。あれ、無価値なんですよ。東京のような都会では何より高くつくのはスペースですよね。スペースを専有するぶん、モノの価値がマイナスになっているんです。
この間、ゴミ屋敷コンサルに行ったんですよ。
そういうお仕事もされるんですね。
借金玉:依頼主は、ちゃんと働いてる人です。ただ、家のドアを開けると、モノがざあっと降ってくる。「5万円払うから、何とかするコツを教えてくれ」と言われたので、こう答えました。「5万円使う気があるんですね? それなら今から30分で、絶対に必要なモノだけ部屋の外に出してください。そうしたら、4万円で業者を呼んで、部屋のなかに残ったモノを処分して、残り1万円を私がもらいます」と。
すんなり進んだのですか。
借金玉:いや、抵抗されました。「大事なモノがいっぱいある!」って。「1日くれ」というのを2時間で妥結して、業者を呼び、トラックで大量のモノを運び出しました。爽快でしたよ。
それは自分じゃできませんね。
借金玉:冷静に計算すると、どう考えてもそうなるんです。その部屋の家賃は11万円なんですよ。なのに、大量のモノに占拠されて、部屋の使用可能部分が、多く見積もっても家賃3万円分くらいしかなかった。「月に8万円をどぶに捨てていると思ったら、大体のモノは一度捨てたっていいでしょう。また買えるじゃないですか」と説得しました。
整理整頓は訓練なのですが、トレーニングを始める前にそもそも「なぜ片づけをしなきゃいけないのか」が腑(ふ)に落ちないと、動けない人が多いんです。そこを納得してもらう。部屋に積んであるそれらすべての価値は、マイナスだと。ゴミ屋敷対策は、基本的にこの方法です。
あとは、トラックの手配をするだけと。
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