発達障害の問題を、ライフハック(生活や仕事の質や効率を上げるための工夫や取り組み)で解決しようと提唱する借金玉さん。注意欠如・多動症(ADHD、Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)の診断を受けているが、自閉スペクトラム症(ASD、Autism Spectrum Disorder)的な症状も多分に持ち合わせているという。

 なぜ、発達障害のライフハックなのか。子どものころから困惑させられてきた「ちゃんとやりなさい」というフレーズの功罪。自分なりに編み出した整理整頓の工夫。銀行員時代に上司や先輩から学んだこと……。さまざまな経験を経て、発達障害に悩む人たちにエールを送る。

 「発達障害の僕らも、成長する」
 「年をとるほど、発達障害は楽になる」
 「人生を諦めようとしたって、諦められない」

 インタビューするのは、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの黒坂真由子。

借金玉さんは、発達障害に必要なのは「治療」ではなく「対応」であると提唱されています(「発達障害の僕が『治療よりライフハック』と思う理由」参照)。ご著書では、対応に必要な「ライフハック」の手法を紹介しています。

借金玉さん(以下、借金玉):僕が具体的な方法を提示しているのは、「ちゃんとやりなさい」というフレーズにこれまで散々困らされてきたからです。

ああ、「ちゃんとやりなさい」……。つい言っちゃいます。本当にすいません。

借金玉:子どものころは特に、「ちゃんとやりなさい」の「ちゃんと」がよく分からなかったんです。「ちゃんと」とは、何か? それはおそらく、毎日学校に行くことであり、遅刻しないことなのだろう、そして友達と仲良くすることなのだろう……。それくらいの解像度では理解できたのですが、実現するプロセスにどんな課題があるのかということが、全然分からなかった。

 「ちゃんと」には、目的があり、そのための具体的な行動があるはずですよね。そのあたりを「ちゃんとやりなさい」という言葉でふんわり伝えるのはやめてほしかった。特に若いうちは、なるべく物事を具体的に伝えてほしかった。でも無理ですよね。僕が10歳のころというと、親もまだ30代半ばだったわけで、そこまで高度な言語能力を期待するのもどうかと思います。

でも、知識として知っていれば「ちゃんと」と言わずに済むと思います。「ちゃんと片付けなさい」ではなくて、「その本を本棚に戻そう」と言えますよね。

借金玉:そうですね。抽象度を下げて、具体的に伝える。

 具体的に説明することがある程度できたら、逆に抽象度を少しずつ上げていくといいと思います。「本を本棚に戻そう」を、「必要な本がいつでも出せるようにしよう」と言い換えるとか。

借金玉(しゃっきんだま)
借金玉(しゃっきんだま)
1985年、北海道生まれ。ADHD(注意欠如・多動症)と診断される。二次障害に双極性障害。幼少期から社会適応ができず不登校を繰り返すも、一念発起して早稲田大学に入学。卒業後、大手金融機関に就職。2年足らずで退職し、起業。経営を多角化するも事業破綻して2000万円の借金を抱えたことから、Twitterで「借金玉」を名乗るようになる。現在は不動産営業とライター・作家業をかけ持ちしている。著書に『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』(KADOKAWA)、『発達障害サバイバルガイド』(ダイヤモンド社)がある。

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