発達障害の問題を、ライフハック(生活や仕事の質や効率を上げるための工夫や取り組み)で解決しようと提唱する借金玉さん。注意欠如・多動症(ADHD、Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)の診断を受けているが、自閉スペクトラム症(ASD、Autism Spectrum Disorder)的な症状も多分に持ち合わせているという。
高校はぎりぎりで卒業し、最初に入った大学は中退したが、その後、勉強に目覚めて、早稲田大学に合格、卒業した(前回「借金玉さん、発達障害の僕が『治療よりライフハック』と思う理由」参照)。そんな借金玉さんのように、学校から離れて独学することで、学力が急に上がる発達障害児は多いという。それはなぜか? 一方で、安易に高校を中退することのリスクとは?
インタビューするのは、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの黒坂真由子。
借金玉さんも、ご著書に書かれていましたが、発達障害がある人に、「何か特別な能力があるんじゃないか?」と期待がかかる場面があります。私も息子がLD(学習障害)なので、愚痴めいたことを口にすると、「でも、普通の人にはない、すごいものがあるってことでしょ? いいじゃない」といった反応が返ってきて、「いやいや、普通のほうが全然いいでしょ」と、心の中で思わずつぶやくことがあります。
借金玉さん(以下、借金玉):僕自身、自分をスティーブ・ジョブズと重ね合わせる悪癖が抜けたのは、30歳をすぎてからです。
普通の人の立場に立てば、発達障害がある人のことを悪く言うわけにはいかないので、気を使った結果として「特別なものがある」という発言になるのでしょう。でも、それは言われた方にしてみれば、鈍器でぶん殴られるようなものなんです。だから、僕も「健常で健全なほうがいいに決まっているだろ!」という話は、結構、意図的にするようにしています。
それにしても、借金玉さんは、早稲田大学を卒業した後、金融機関に就職されています。金融機関で働いていた間は苦労が多かったそうですが、今ではベストセラー作家です。
借金玉:高校を落第ぎりぎりでなんとか卒業した後、なんとなく入った大学は、数カ月で退学しました。それから地元の仲間たちと2年ほど、シェアハウス暮らしをしたんです。シェアハウスといえば聞こえはいいですが、ストリップ劇場を改造したライブハウスのすぐそばにあるボロマンションでの寄り合い所帯でした。月収6万円くらいの極貧生活でしたが、すごく楽しくて、そのうちふと勉強がしたくなって勉強してみたら、早稲田大学に合格して、首尾よく卒業できました。おまけに信じられないほどの幸運に恵まれて、とても立派な金融機関に就職できました。でも、そこまでやってもやっぱり、最初の正社員生活は「駄目」でしたね……。

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