「発達障害のリアル」を、自身も発達障害(学習障害)の息子を育てるフリーランス編集者・ライターの私(黒坂真由子)が模索する本連載。
医師や研究者など、専門家への取材から見えてくる「外側の視点」と、発達障害を持ちながら生きる当事者の「内側の視点」という2つの側面から、探っている。
今回は、前回から引き続き、「内側の視点」。「学習障害」(LD*1)、「注意欠如・多動症」(ADHD*2)、「アスペルガー症候群」(*3)という3つの発達障害の診断を受けている漫画家の沖田×華(おきたばっか)さんへのインタビューをお届けする。
(前回はこちら)
小学校4年生で、最初の診断を受けたが、発達障害を自覚し、認めるまでには10年以上の長い時間が必要だったという。当事者の心の揺らぎと変化を教えてもらった。
*2.注意欠如・多動症、ADHD(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)
*3.アスペルガー症候群(Asperger syndrome)知的障害や言語発達の遅れが少ない自閉性障害の一つ。現在は自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders)の障害群に含まれた概念となっている。
自分が発達障害だと認識したのは、いつごろでしたか?
沖田×華氏(以下、沖田):小学校4年生のときにLD(*1)と診断されて、その後すぐにADHD(*2)じゃないのか、という話が出てきました。
ただ、それもすごく大ざっぱで。「(ADHDとは)どういうこと?」と聞いたら、「あせぐらしい、ってことかな」って。「あせぐらしい」というのは富山の方言で、ちょこまかちょこまか落ち着きがないことです。
とにかく、これは病気だからということで、「何をしたら治るのか?」という話になりました。親も先生も、みんな「治そう」とするんですね。どうやったらこの問題行動が止まるんだろうかと。当時は薬を飲むという選択肢もなくて、「行動療法が一番いいんじゃないか」と聞きつけた母は、「どこに行ったら、その治療を受けられるのでしょうか」と。必死でした。
発達障害の情報がまだあまりなかったころですよね。
沖田:私自身、診断が付いても、ぴんとこなかったんですね。だって診断されたところで、気付いたら自分が何かをやらかしていて周りが怒っている、という状況は変わらないわけです。何が原因で自分には集中力がないのかも分からないままですし。

1979年、富山県生まれ。小中学生のころに、学習障害(LD*1)、注意欠如・多動症(ADHD*2)、アスペルガー症候群(*3)と診断される。高校の衛生看護科を卒業後、看護学校に進み、正看護師として勤務。名古屋で風俗嬢として働いた後上京し、『漫画アクション』(双葉社)の新人賞に応募、選外奨励賞を獲得し2005年デビュー。『毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で』(ぶんか社)など著書多数。『透明なゆりかご ー 産婦人科医院 看護師見習い日記』(講談社)にて、2018年「第42回講談社漫画賞(少女部門)」受賞。本作はNHKでドラマ化され、「第73回文化庁芸術祭テレビ・ドラマ部門」にて大賞を受賞。ペンネームの由来は「起きたばっかり」(写真:栗原克己)
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