「目標とする人」を探す必要はない

 実は、自分らしいキャリアイメージをつくるのであれば、目標となる人を探すことはむしろマイナスです。それよりも、いろいろな人から刺激を受けながら、自分のキャリアの目的を見いだし、進化させていくことで個性的なキャリアを築く――こうした意識が大切です。これが、ポストコロナ時代のキャリアの新常識と言えます。

 そのために必要なことはネットワークをどんどんと広げること。目標にしたい人を探すのではなく、自分の現在の枠の外にいる人たちと交流して自分の枠を広げることが大切なのです。

 結果、社内起業を提案したり、パラレルキャリアを築いたり、副業、転職、将来的に独立を考えるなど、キャリアの選択肢も増えてきます。働き方は1つではありません。

パラレルキャリアのはしりだった渋沢栄一

 大河ドラマ「青天を衝け」をご覧の方も多いでしょう。主人公である渋沢栄一は日本資本主義の父と称されますが、とてつもないパラレルキャリアを歩んでいます。なんと約500の民間企業と約600の社会公共事業の立ち上げに関与しているのです。もはや枠などというものはないに等しいですね。

 なぜ、これほどの事業に関与することができたのか。それは彼が大きな志を持っていたから。だからこそ、生涯行動し続けられたのです。

 渋沢の大きな志は「国家のために商工業の発達を図りたい」というものでした。さらに彼は、大きな志が何よりも大切で、これはぶれてはいけないものだが、その代わり小さな志は状況により変わる可能性があるものと語っています。大きな志を人生の目的、小さな志を目標と考えると、渋沢栄一は100年前から現代に通ずるキャリア論を説いていたわけです。

 さて、そんな渋沢の言葉をもう1つ紹介しましょう。

 「成功など、人としてなすべきことを果たした結果生まれるカスにすぎない以上、気にする必要などまったくないのである」

 成功する、しないを気にすると動けなくなりがちですが、それは置いておき、実験するつもりで自分の志に基づいてとにかく動いてみようということです。他人の声や世間の目をいったん忘れて、自分の志に基づいた行動をしてみることで、新しいキャリアの道が開かれるに違いありません。

目標喪失=たくさんの目標が持てる時代

 目標喪失時代と聞くと絶望的になるかもしれませんが、そんな必要はありません。目的をしっかりと持つことで、逆に目標はいくつでも持てる時代でもあるのです。

 たくさんの目標にアプローチすれば、いろいろな人たちとのつながりが生まれて、いつの間にか自分の枠が広がっていきます。これまでは、自分はこのくらいの人間かなと、無意識に制限を設けていた人も多いと思います。しかし、その制限を解くことで、自分の限界を突破するキャリアを歩みやすくなるのです。

 目標という魔力は強力なだけに、ついつい最適と思える1つの目標に絞り込みがちです。結果、目標喪失のワナにたやすくはまってしまいます。今の枠から飛び出して、さまざまなことにチャレンジしながら自分の限界を突破するキャリアをつくっていくことが新時代のキャリアデザインです。

(写真: metamorworks /Shutterstock.com)
(写真: metamorworks /Shutterstock.com)

先が見えない時代の「やりたいこと」のつくり方。
副業、社内起業、転職、パラレルキャリア、独立…… 働き方は1つじゃない!

「何かを変えたいけれど、どうすればいいのかわからない」というビジネスパーソンの必読書。
想像以上の自分に出会えるキャリアの方法論を「4つのステップ」で解説。講師のセミナーを聞き、ワークショップを受けるようなイメージで読み・実践できる。

片岡裕司・阿由葉隆・北村祐三(著)
日本経済新聞出版

この記事はシリーズ「ポストコロナ時代のキャリア新常識(ニューノーマル)」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。