絞り込みはリスクが高い
組織で行われるキャリア研修の場や、自分でキャリアデザインの本を読むなどして「目標」を考える人も多いでしょう。しかし、ここに大きなミスマッチが潜んでいます。
これまでの一般的なアプローチは、WILL(やりたいこと)、CAN(できること)、MUST(やるべきこと)の重なるところに目標を絞り込んで考えていくことでした。しかし、CANは自分にできそうなことであり、MUSTは目の前の仕事にとらわれるため現状の自分の枠組みの中に小さくまとまることになりがちで、最も大切なはずのWILLがどこかに置いてきぼりになるのです。
WILL、つまりキャリアの目的を大切に育てていくことでやる気を充実させたり、変化していったりしなければならないのに、いつの間にかWILLが目標探索の道具になってしまうという構図です。
複業への扉が開き、70~75歳まで働くことが当たり前になる時代には目標を絞り込むことはリスクの高い選択となります。しかも、小さくまとまったような目標であればなおさらです。
「目標にしたい先輩」は本当に必要?
「目標にしたい人」という言葉がありますが、これについて若手社員はどんな意識を持っているのか。興味深い調査結果があります。
一般社団法人日本能率協会が2018年9月に実施した「入社半年・2年目 若手社員意識調査」です。「現在の職場内に、目指したい上司、目標にしたい先輩はいますか」という問いに、「いない」と答えた人が57%に上ったのです(期間:2018年9月12日~14日。回答:400人)。
なぜこうした結果になったのか。
大きいのは、世代によるキャリア観のズレです。上司、先輩に当たる40代の多くは、キャリアの成功イコール「昇格や出世」とすり込まれてきた人たちです。一方、若手社員はもはや組織内での成功に働く価値を見いだしていません。
価値観が多様化した今、一概に年代でくくることは難しいですが、それでもやはり20代、30代のいわゆるミレニアル世代は、その上の世代と比べて、「社会問題の解決」「自分らしさ」「自分にとっての幸せ」を追求する働き方を重視する傾向が強い、と言えるでしょう。
つまり、この調査結果は、「職場には自分のキャリアの目的を持って自分らしいキャリアをつくっている上司、先輩がいない」と若手社員が考えていることの証左と言えるのです。
しかし、ここで大きな問題があります。そもそも目標とする上司や先輩は必要なのでしょうか。

(写真:imtmphoto/Shutterstock.com)
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