「五輪代表決定」。栄功の瞬間に選手を襲った虚無感の正体
2021年、コロナ禍でたくさんのイベントや行事が中止になりました。不本意な転職や休業を余儀なくされた人も多くいるでしょう。不確実性を増す現代は、たくさんの人の目標が奪われる「目標喪失時代」と言い換えることもできます。
セミナーや研修でも「これから先、何を目指せばいいのか分からなくて……」という相談をよく受けます。特に20代、30代の若手ビジネスパーソンに顕著な傾向です。
目標を喪失するというのは、それが奪われた場合に限りません。意外なことに、目標が達成されたときにも人は大きな喪失感を覚えるものです。ある有名アスリートから聞いた話を紹介しましょう。
その選手は、オリンピック出場を目標として多くの苦難と挫折を乗り越え、ついにその切符を手にしました。普通に考えれば、人生最高の瞬間です。ところが、その途端、強い虚無感に襲われ、うつ状態となったそうです。オリンピック代表になるという目標がなくなったことが原因でした。
目標がいかに果てしないエネルギーを持つか、目標がなくなることがどれほどの喪失感をもたらすかをうかがい知ることのできるエピソードです。オリンピックという目標がなければ、苦難と挫折を乗り越えることは難しく、一方でそれだけの強固な目標だったがゆえに、なくなったときの落ち込みの衝撃もすさまじい。目標が持つ魔力であり、目標喪失のワナです。
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