安定志向が不安をもたらす

 氷河期世代は就職活動で苦労をしたこともあり、企業内で成果を出し、昇格、出世を目指すというキャリアイメージを持つ方がほとんどです。転職者が増えているという印象もありますが、総務省の「労働力調査」を見ても、転職率(転職者/総労働人口×100(%))は2011年の4.5%から2019年の5.2%とそれほど顕著な変化はありません。

 1つの会社、1つの専門性を追い、管理職へとステップアップするという固定的なキャリアイメージ、すなわちキャリアの常識がある世界は、キャリアについて考える必要がなく、ある意味楽な世界でした。

 しかし、もはや昇格や出世といった成功モデルは成り立たない時代です。もしあなたがこれまでのキャリアの常識にとらわれていると、その通りにならない焦りや自己を否定する気持ちを持つことになりかねません。結果、強い後悔や不安が生まれ、仕事に前向きになれなくなってしまうのです。

 これまでのキャリアイメージは幻想。この事実をまずしっかりと認識しましょう。これは決してネガティブなことではありません。誰もが目指す共通の目標がなくなった代わりに、自分オリジナルのキャリアをつくる、つくることができる時代が到来したということです。

自分らしいキャリアをつくる3つの処方箋

 「新たなキャリア観、自分らしいキャリアイメージをつくる」と聞いてハードルが高いと感じる方もいるでしょう。具体的にはどうすればいいのか、これからお教えします。

 ポイントは3つです。1つ目はキャリアの目的を持つこと。目標ではなく、目的であることが大事です。「部長になる」「せめて課長にはなりたい」といった目標ではなく、自分は誰に対し、何をもたらす存在であり続けたいかという目的、すなわち自分の軸を見つけることです。

 2つ目は目標をたくさん持つことです。今までのキャリアの常識が出世という1つの目標の世界だったとすれば、仕事以外の分野も含めたくさんの人生の目標を設定しましょう。目標のポートフォリオを組むと言い換えてもいいかもしれません。自分の目的に沿うことであれば、仕事に関係するしないにかかわらず、どんどん活動を広げていくのです。例えば、ボランティア、副業、NPO活動、MBAでの学び、地域活動、趣味の仲間をつくるなどどんな活動でもOKです。

 そして3つ目は、キャリアの設計において安定を目指さないということです。もちろん、住宅ローンを抱え子育て世代でもある40代にとって、安定的な生活を送ることが重要なポイントであることはよく分かります。でも、「安定=変化しない」と捉えていると、変化の激しい不安定な時代に翻弄されてしまいます。

 地震対策の免震構造を考えていただくといいでしょう。大きな揺れには、建物を固く頑丈につくる耐震ではなく、一定程度揺れることで建物を安全に守る対策が有効です。キャリアにおいても、地震のような土台側の揺れがたくさん起きる時代です。固い安定を目指すといつかポッキリと折れる可能性が強い。それが実は皆さんを不安定、不安にしているのです。

 自分のキャリアの目的を大切にして、いろいろな目標にチャレンジするという、ある意味、不安定な状態をつくることが、変化の激しい時代では安定をもたらします。ポストコロナ時代のキャリアの新常識は、安定を目指すのではなく、自分の中に積極的に不安定状態を取り込んでいくことと言えます。

(写真: UV70/Shutterstock.com)
(写真: UV70/Shutterstock.com)

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片岡裕司・阿由葉隆・北村祐三(著)
日本経済新聞出版

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