少数精鋭だったはずなのに現実は……

 「職場の感情調査」で特に数値が悪かった40代はいわゆる就職氷河期世代です。厳しい就職活動を乗り越えて有名大手企業に就職できた人は「超勝ち組」、第1志望には就職できなかった人たちも社内では「勝ち組」と目されていました。少し上のバブル世代に比べて能力が高く、人数が少ないこともあり早くマネジャーに昇格できる少数精鋭と言われ続けてきた人たちです。

 しかし実際はそうはいきませんでした。大手企業を中心に、年功序列の解体が緩やかに進み、また“失われた20年”で企業業績は伸びず、多くの組織で統廃合が進みポストが減少していきました。

 多くの40代がプレイングマネジャー、あるいはプレーヤーのままで仕事をする中、技術進化、DX(デジタルトランスフォーメーション)、AI化の促進などにより、新たな専門性を獲得する必要性が新たに生じています。自分は学び直しをして本当についていけるのだろうかという不安、さらに人生100年時代の到来で何歳まで働くかも見えなくなってしまいました。

 そして、ダメ押しがコロナショックによる働き方の地殻変動です。在宅ワーク化が一気に進み、部下管理の限界から、これまで以上に個人が担う仕事とその成果でシンプルに組織運営をしていこうというジョブ型人事制度を志向する企業が増えてきました。こうした社会変革のあおりを一番強く受けているのが40代で、働きがいの数字の低さはそれを物語るものです。

「漠然とした不安」がやりがいを奪う

 多くの氷河期世代は、「こんなはずじゃなかった」という後悔と未来への不安を感じています。でも、ここで最も問題なのは、「不安の正体」が見えていないことです。

 私たちはビジネスパーソンへの聞き取り調査を多く行っていますが、そこで多くの方が口にするのが「何となく不安」ということです。漠然とした不安と聞くと大したものでないと思われるかもしれませんが、これは対処すべき問題が見えないわけで、適切な行動が取れなくなってしまう非常に危険な状態を招きます。そして先が見えないので、多くの人から働きがいも奪っていくのです。

 では、なぜ問題が見えないのでしょうか?

 それは、私たちがかけている眼鏡がよく見えないものになっている、つまり、現実に合わなくなってきているからです。眼鏡とは私たちのキャリア観、キャリアの常識を指します。

 キャリアとはこういうものだという古い常識が私たちを不安にし、働きがいを奪っているのです。

著者紹介

片岡裕司(かたおか・ゆうじ)
ジェイフィール 取締役コンサルタント、多摩大学大学院客員教授、日本女子大学非常勤講師、一般社団法人Future Center Alliance Japan理事
アサヒビール、同社関連会社でのコンサルティング経験を経て独立。ジェイフィール立ち上げに参画し現在に至る。組織変革プロジェクトや研修講師を担当。
著書に『なんとかしたい! 「ベテラン社員」がイキイキ動き出すマネジメント』、共著に『週イチ・30分の習慣でよみがえる職場』(いずれも日本経済新聞出版)などがある。

著者紹介

阿由葉隆(あゆは・たかし)
ジェイフィール コンサルタント、国家資格キャリアコンサルタント
外資系人材サービス企業営業支店長、アウトソーシングサービス部門の立ち上げ、運用部門長などを経て、2017年にジェイフィールへ参画し現在に至る。人材育成・組織変革プロジェクト、研修ファシリテーターを担当。

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