環境は想像よりはるかに移ろいやすいからこそ、試し続ける意味がある

:「競争環境が変化している」というのは当たり前のように聞く言葉ですが、大企業の新規ビジネスで失敗するパターンの多くは、まさにこの環境変化に対する認識にあるのではないかと思っています。環境の変化を正しく受け止められていないというか、自分の会社ならば対応できるはずだと思い込んでいるというか。

荒木:なるほど。

:これはここ数年、いろいろな企業に入らせてもらって、社長付きとか、トップクラスの役員付きの仕事をしてくる中で感じていることなのですが、大企業の既存のビジネスはスノーボード型で、新規事業とかスタートアップはサーフィン型なのに、足元にきちんと目を向けていないから気づかなくて失敗しているのではないかと。

荒木:サーフィンとスノーボードですか。

:サーフィンをやっている人がスノーボードをやると、うまくなるスピードがものすごく速いんです。なぜかといえば、表面が動かないからです。横乗りの姿勢はもともとできているわけですから、サーファーは滑走のスピードに慣れるだけでいい。でも、スノーボードがうまい人がサーフィンもできるかというと、そうじゃないらしいんです。

荒木:へえ、面白い。不安定さがあるからか。

:はい、「立つ」ことがまずできないそうです。ですから、ファーストステップのハードルの高さが、全然違うんですよ。それでスノーボードからサーフィンのほうが、圧倒的に難易度が高いらしいんです。僕はスキー指導員の免許を持っているんですが、水上スキーができるかといったら、多分できないです。立てないから。立つということ自体にハードルがあるんですね。

荒木:安定的な形で計画的にビジネスを行ってきた、足元が安定していた大企業にとって、急に不安定なところに行こうとすると、立ち上がることさえ難しいと。

:ええ。経営層を見ていると、業務改善のレベルというのはスノーボードみたいなものなんです。既存の事業があって、その上で改善していくわけですから。足元は安定しているんですね。でも新規事業というのは、足元は「水」なので、立つのが大変。だけど経営者って、首から上しか見ていないんですよ。だから担当者に、「お前なんで立てないの?」って言っちゃうんですね。

荒木:ああ、面白い比喩ですね。首から上しか見ていないって。

:担当者からすれば、「いや、足元を見てくださいよ」ということですよね。視座が高いことにはいい面も悪い面もあるけど、視座が高すぎる経営者は上のほうしか見ないんです。足元まで見ないんですよね。

荒木:なるほどね。足元がどれだけ不安定なのかというのが、目に入ってこないわけですね。

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