「完全競争」から「完全独占」にシフトできた会社が生き残る

竹内:手掛けているビジネスそのものの違いによっても、明暗が分かれます。競争相手の多い「完全競争」のビジネスは、逆境下では真っ先に淘汰されてしまう。例えばクリーニング店やカフェ、マッサージ店などは街中に類似店があり、参入障壁も低く、完全競争になりやすいと言えます。

 一方で、そのジャンルに1社しかなく、ライバルが存在しないビジネスは「完全独占」なので、逆境下でも生き残る可能性が高くなります。

 新著でもいくつか「完全独占」型のビジネスを取り上げています。1つは東京や大阪に3店舗を持つイベリコ豚のレストラン「IBERICO-YA」のネット通販です。同社の山本真三社長は、もともと客単価5000円で飲み放題の居酒屋を経営していましたが、ある時イベリコ豚の最高級ランク「レアル・ベジョータ」に出合ってほれ込み、客単価1万円の高級イベリコ豚専門店に転換。実店舗の良質なお客さんをネット通販に誘導することができて、コロナ禍でも売り上げは絶好調だそうです。

 もう1つは青森県八戸市にある「木村書店」という本屋さん。最初、子どものお客さんを意識してかわいらしいイラスト付きのPOPを作って店頭に並べていましたが、しばらくすると「本と一緒にPOPも欲しい」と言われるようになり、気づけば「POPごと本を売っている本屋さん」になりました。

POPで埋め尽くされた「木村書店」の店頭<br>(写真提供:木村書店)
POPで埋め尽くされた「木村書店」の店頭
(写真提供:木村書店)
 

コロナ禍以降、お店は、ネットやSNSでの情報発信が不可欠になったとのことですが。

竹内:コロナ禍がもたらした影響をひと言で言うと、顧客との接触頻度の激減、または消滅です。いくら素晴らしい商品を作って店に並べても、お客さんがやって来なければどうしようもありませんから。

 コロナ以前なら、SNSなどには見向きもせず、集客イベントでファンづくりをしてきたお店も結構あり、私もずいぶん取材しました。思い返せばほんの少し前まで、「コト消費」と言って、みんな集まってワイワイやるイベントが花盛りでした。しかし、コロナ禍以降、そうしたイベントは消滅しました。

 そうなるとお店もメルマガ、ブログ、SNS、動画などをやらないわけにはいかなくなってきます。先のテークアウトに関する調査でも、「テークアウトの実施をどこで知ったのか」の質問で一番多かった回答は「SNS」でした。

 飲食店だけでなく物販店も同様です。例えば寝具店がオーダー枕の体験会をやろうとしても、緊急事態宣言下ではまずできません。そうなると、オンラインで情報をどう流そうか、SNSをどうやろうか、どう動画を作ろうかという話になってきます。

 先に紹介した木村書店の公式ツイッターは本のPOP紹介以外にも日記風の1ページマンガもアップ、フォロワー数は2万5000人を超え、その結果、遠方からわざわざやって来るお客さんも増えているそうです。

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