マッチングサイトで電話相談

個人ビジネスもたくさん紹介しています。

竹内:「ココナラ」というマッチングサイトを使い、副業で悩みごとの電話相談を行っている「けんちゃんママ」という女性がいます。連載の中で「本名ではなく愛称でもOK」となったのは、この回だけでした。けんちゃんママも日経MJに登場して、電話相談の依頼が増えたと言っていました。月に30万から40万円稼ぐそうで、もはや副業の域を超えています。「電話で悩みごとを聞く方法」自体をパッケージにして商品化したりもしています。

ココナラとはどういうものですか。

竹内:ココナラのキャッチフレーズは、「みんなの得意を売り買い スキルマーケット」です。これまでランサーズやクラウドワークスのような副業サイトがありました。ココナラはそれらとは違って個人をターゲットにした少し緩い感じのマッチングサイトです。

 例えば、動画編集を1本5000円とか1万円でやってくれる人をつなぐビジネス代行、美容相談、恋愛相談、占いなど、個人向けのさまざまなサービスをマッチングします。そのうちの1つに「電話で悩みごとを聞く」というのがあります。

 出品者は「相談1分につきいくら」と決めて購入者を募ります。ココナラが間に入るので、電話番号が相手に知られることはありません。「今から怖い漫画家の原稿を取りに行かなきゃいけないんだけれど、励ましの言葉を1つください」とか、「時代劇に出るので、台詞(せりふ)の練習相手になってくれないか」とか、「昔の彼氏への恨みごとを聞いてほしい」とか、内容はそれこそさまざまだそうです。最長で8時間以上聞いたことがあるそうです。

「おっさんレンタル」や「レンタルなんもしない人」の電話版みたいです。

竹内:私はけんちゃんママをオンラインで取材しましたが、話を伺っていると何か引き込まれるような魅力を感じました。人の悩みをちゃんと聞いてあげて、上手に相づちを打って、アドバイスもできるというのは、そう誰もが持っているスキルではありません。

究極の個人スキルですね。

竹内:はい。コロナ禍で副業を希望する人は増えています。その理由は労働時間や給料が減ったこと、将来への危機感を持つ人が増えたこと、副業を認める会社が増えたこと、在宅で仕事をしやすくなったことがあります。

「ココナラ」のようなプラットフォームができたので、サイドビジネスを始めやすくなったとも言えますね。

竹内:そうですね。けんちゃんママも当初はうまくいきませんでした。ココナラはマッチングスキルを売るサイトなので、「体育会系の息子2人に素早く弁当を作る方法」のようなスキルを販売していましたが、まったく売れません。そこで、電話相談を始めるようになったそうです。

ネット上のプラットフォームを利用して新たなビジネスを始めるという意味では、サブスクのサービスも急拡大しているそうですね。

竹内:はい。スマホを使ったサイト、例えばfavyサブスクなどを使ってサブスクサービスを始めたお店や会社が結構あります。

 コロナ禍でサブスクを利用する人が急増しています。オンラインで定額制サービスを提供しやすくなり、「サブスク=お得」というイメージが広がったことが大きいと思います。新著では、飲食店や電動歯ブラシのサブスクの事例を紹介しています。

 東京でラーメン店を展開する福しんは、来店時に350円以上注文した人に限り1日3回まで6個入りの餃子(ギョーザ)を無料で食べることのできる餃子定期券を販売しています。スマホ決済で月額500円。コロナ禍でありながら、客数は前年比で2割増えているそうです。

 一方で、9割のサブスクサービスは失敗しているという調査結果もあります。サブスクは始まったばかりのビジネスモデルですから、軌道に乗せるには時間がかかると考えたほうがいいでしょう。


(写真: aijiro/Shutterstock.com)
(写真: aijiro/Shutterstock.com)

小さな会社・お店がコロナ禍に生き残る秘訣!!
超ユニークな事例満載

コロナ禍で消えた店や会社には、
コロナ不況以前にも、何かしらの問題があった。
脆弱な財務、「なんとなくの経営」、
市場の変化に対応できないビジネスモデル――。
一方で、生き残っている店や会社は、
目の前で起きた困難にすばやく対処しただけではなく、
もともとあった危機意識の積み重ねによって
改善をし続けてきたのである。 (本文より)


日経MJの長期連載「竹内謙礼の顧客をキャッチ」の取材をもとに、小さな会社や店舗、中堅企業の逆風下における戦い方を示す。


竹内謙礼著 日本経済新聞出版

目次
第1章 コロナに勝つ会社、コロナで消える会社
第2章 業界セオリーをひっくり返し、逆境に打ち勝った「非常識戦略」
第3章 逆境の中でもトコトン楽しんでもらう「エンタメ戦略」
第4章 ナナメの発想で生き残る「新アイデア戦略」
第5章 コロナ禍の新消費動向に対応する次世代戦略
第6章 コミュニケーションの質を極める「ネット新戦略」

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この記事はシリーズ「逆境下でも小さな会社・お店が生き残る法」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。