誰もお金を出す気がない

一人芸の頂点を決めるコンテスト「R-1ぐらんぷり2020」で、ご自身が開発したゲームをネタにして優勝しました。
野田氏:この優勝がきっかけとなって、ゲームクリエーターの後藤裕之さん(編集部注:大ヒットゲーム「ことばのパズル もじぴったん」のクリエーターとして有名)から「一緒に何かやらないか」とお誘いをいただいたんです。
それまで全く面識はなかったのですが。何度か会議を重ねて、ゲームを作ろうと決まりました。ただ、重要な問題に直面します。開発するための資金がなかったんです。(後藤さんが所属するコンテンツ制作の)カヤックはもちろん、吉本興業も一切お金は出してくれない。
さすが吉本……。R-1優勝という実績があっても出してくれないんですね。
野田氏:まぁ吉本に限らず、やっぱりフツー、平社員が「1000万円出してください!」と会社に言ってもお金は出ませんよね。事業が成功する保証もなく、危ない賭けです。誰もお金を出す気がない。でも、お金がないとプロジェクト自体がなくなってしまう。そもそもちゃんとゲームを作ったことがないんで、いくら必要なのかもよく分かっていませんでした。
資金を集めるべく、昨夏にクラウドファンディングを実施しました。当初目標の400万円に対して、集まった資金は3倍以上の1357万円。ゲーム開発費用の相場が分からないのですが、この金額で十分でしたか。
野田氏:もともと、しっかりとしたゲームを1本作るのではなく、簡単なミニゲームをたくさん作ってセットにして楽しんでもらう構想でした。ただ400万円というのは、「何とかゲームを出しました」「このプロジェクトに意味はありました」と言えるギリギリの額だったんです。
この金額を下回ると開発そのものが白紙になってしまう。それだけは避けたかったので、あえて目標を低めに設定しました。正直、ちゃんとしたゲームを作ったことがないので、実際にいくらかかるのか分からず、手探りで集められるだけ集めるという状態でした。予想は上回りましたが、足りていたかというとそうではありません。
今年4月の発売時点では16本のミニゲームを収録しました。
野田氏:クラウドファンディングで資金を集めたので、支援してくださった人にはリターンをたくさん用意しました。
ゲーム内の「主人公になれる権」は5万円、「中ボスやレアキャラになれる権」は2万円などのリターンをたくさん用意しました。一番高いのは「野田ゲーをいっしょにつくれる権(ゴージャス)」で100万円です。最も安いのは「エンドロールに名前が出る権(小)」や「出待ちの対応がかなり良くなる権」の1000円です。野田ゲーに登場できる権利をたくさん設定したことで、ゲーム用の素材もたくさん集まりました。
ただ、何も考えずにリターンをたくさん売り出した結果、後でどこにはめるんだこれ、という素材が想像以上に集まってしまったんですよね。支援者が提供してくれた「ペットの画像」だけで50枚以上はあったんです。これどうしようって。結局、いろんな動物が登場してレースする「新・干支(えと)レース」なるゲームを作ってねじ込みましたが。
かなり強引ですね(笑)。
野田:大変だったのは「BGM制作に参加することができる権」です。ある支援者がなぜか「歌入り」の曲を送ってきて……。ゲームのBGMで歌入りってあり得ないじゃないですか。どうしようか悩みましたが、ゲームのオープニングに流れる曲として活用させていただきました。
豊富に用意された素材を使ってストーリーを作る。そこはもう「モノボケ」の境地ですね。
「あなたが描いた背景イラスト、なんでも採用権」もたくさん購入いただいたのですが、支援者からいろんな絵が来るから、ゲームの中の絵が全然つながらないんです。ものすごくちぐはぐで、フツーの会社だったら絶対にストップがかかるような案件です。
ちぐはぐ問題をどうクリアするかという点では、開発自体がある意味ゲームですね。
そうですね。ゲームでもあり、お笑いでもあります。
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