登録データと位置情報でコンプリート狙う

 ゲームの「鉄とコンクリートの守り人」は、参加者がインフラの「守り人」となって、力を合わせて国内の老朽インフラに立ち向かうという内容だ。参加者は会員登録を済ませ、ゲーム内の地図上に記された位置のマンホール写真を撮影して投稿する。あらかじめゲームの地図内にあるマンホールの位置情報は、下水道台帳に記載されているデータなどを基にしている。だが、データにないマンホールもある。その場合は、新規として投稿する。

周囲の状況を撮影して安全を確認した後に、マンホールを撮影
周囲の状況を撮影して安全を確認した後に、マンホールを撮影
スマホのGPS機能を使い、地図上のマンホールを探して写真を撮影し、投稿する。投稿が終わったマンホールの色は変わる仕組み
スマホのGPS機能を使い、地図上のマンホールを探して写真を撮影し、投稿する。投稿が終わったマンホールの色は変わる仕組み

 すでに写真が投稿されたマンホールはゲームの地図上で色が変わり、「投稿済み」が一目で分かるようになっている。地元に未投稿のマンホールはないかを探したり、あるいは未投稿のマンホールを探して遠くまで出歩いたりと、参加者は協力して楽しみながら「コンプリート」を目指す。ゲームの登録会員は全国で3万人に及ぶ。

 世界中で人気を博したスマホ向けゲーム「ポケモンGO」では、ユーザーがポケモンを獲得するために交通マナーを守らないなど社会問題化した過去がある。マンホールは車道にも多く存在するため、ゲームに熱中しすぎると、事故につながる危険性もある。ゲームでは周囲の状況をまず写真に撮り、その後マンホールの写真撮影と2段階に分けることで、事故を防ぐ仕組みを構築している。

 また、私有地や立ち入りが危険なエリアのマンホールは、ゲームの地図から除外するなどの配慮もしている。

加賀市では8000基のマンホールを1日半でコンプリート

 WEFと日本鋳鉄管は2021年8月に、東京・渋谷区で「マンホール聖戦」の実証実験を始めた。当初の狙いは、区内にある約1万基のマンホールの写真を5日間で収集するというもの。だが、蓋を開けてみれば初日のみで7800基の写真収集に成功し、3日ですべての写真データを収集できた。

 21年10月には「マンホール聖戦 東京23区コンプ祭り」と題して、対象エリアを23区に拡大して実施。期間内で約24万基のデータが集まった。23区内のうち6区は収集率が100%に達し、文字通りのコンプリートとなった。

 同年11月には地方都市で初となる石川県加賀市で約8000基のマンホールを対象にマンホール聖戦を展開。開始初日で95%を収集し、1日半で全マンホール蓋の画像収集が完了してしまったという。

 満を持して、ゲームのエリアを全国に拡大し、今まさにマンホール聖戦が実施されている。これまでのイベントで用意した賞金の多くは運営サイドの持ち出し。今後は、取得したデータを活用した自治体への提案などにつなげていく考えだ。マンホール蓋や下水道管の更新需要が高まれば、メーカーである日本鋳鉄管にもビジネスチャンスが生まれる。

 コンサルティング企業出身でWEFの共同創業者である森山大器CEO(最高経営責任者)は「インフラへの再投資で最も重要なのは情報だ。そこに価値がある」と語る。地方自治体が単独で調べるには限界がある。「新型コロナウイルス禍でエッセンシャルワーカーという言葉に注目が集まった。これからのインフラ再整備でカギになるのは『エッセンシャル・ゲーマー』ではないか」(森山氏)

 ゲームがインフラを救う。そんな取り組みが、もっとあってもいい。

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