<span class="fontBold">「日経ビジネスLIVE」とは:</span>「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト
「日経ビジネスLIVE」とは:「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 日経ビジネスLIVEは、10月5~7日の3日間にわたり「The Future of Management 2030:資本主義の再構築とイノベーション再興」と題したオンラインセミナー(ウェビナー)を開催。ノーベル賞経済学者や世界的に著名な経営学者ら世界中の経済・経営学の英知を結集して、2030年の企業とマネジメントのあるべき姿について意見を交わしました。

 10月5日の基調講演「ポストコロナの資本主義とリーダーシップ」では、世界的な経営学者、カナダ・マギル大学デソーテル経営大学院のヘンリー・ミンツバーグ教授と、同教授と長年親交がある中央大学国際経営学部のダニエル・ヘラー特任教授が登壇。モデレーターは日経ビジネス編集長の磯貝高行。後半は、家族のあり方や企業の長期戦略について辛辣なコメントを交えながら議論しました。

※日経ビジネスLIVEで実施したウェビナー(2021年10月5日開催)の再配信です。上編でウェビナーの動画がご覧になれます(同時通訳音声付き)。

磯貝高行・日経ビジネス編集長(以下、磯貝):引き続き、視聴者からの質問です。資本主義の根本的な問題は、労働力や天然資源の収奪や経済成長至上主義だと思います。欧米ではグリーン・ニューディールを推進しようとしていますが、経済成長至上主義と環境保護は両立できるでしょうか?

ヘンリー・ミンツバーグ・カナダ・マギル大学デソーテル経営大学院教授(以下、ミンツバーグ氏):それは非常に単純な回答で、やる以外の選択肢はありません。できるかできないかではなく、やらないと自滅します。

 搾取をするのは企業だけではありません。私も電気や紙を使っています。我々は皆、天然資源を搾取しているのです。

 経済と環境保護を両立する方法を考える必要がありますが、その前に1つ言いたいことがあります。新型コロナウイルス禍から私が受け取ったメッセージは、私たちは、その気になれば夢にも思わなかったような変化を起こせるということです。もし2年前に、日本経済新聞などのような大手メディアが気候変動に対処する方法として「全員を家に閉じ込め、経済を封鎖することです」と書いたら、常軌を逸していると思われたに違いありません。でも考えてみてください、私たちは経済を封鎖したのです。恐ろしくて心配で、パニックに陥ったからですね。

企業を破たんに追い込むよりも、行動変容を促せ

 しかし、気候変動への対応では、それほど極端なことをする必要はありません。環境を汚染している部分をストップすればよいだけです。環境を汚染している企業を破たんに追い込むのではなく、汚染を止めるのです。

 私たちは気候変動に対処するために家に閉じこもる必要はありません。ガソリン車の代わりに電気自動車を運転するだけです。ただ、私たちはまだ気候変動でパニックになっていません。洪水などが起こった一部のエリアはパニックに陥ったかもしれませんが、それは一部の場所ですし、(石炭や石油など)炭素燃料で稼いでいる企業もパニックに陥ってはいません。

カナダ・マギル大学デソーテル経営大学院のヘンリー・ミンツバーグ教授
カナダ・マギル大学デソーテル経営大学院のヘンリー・ミンツバーグ教授

「長期的すぎる計画より行動を」

 気候変動対応における最大の茶番劇は、任期4年のリーダーの率いる政府が、何十年も先の計画を立てていることです。米国ではオバマ元大統領が気候変動の計画を立てて、トランプ前大統領がそれをゴミ箱に捨てました。バイデン大統領がやってきて、ゴミ箱から拾い上げましたが、この先またどうなるか分かりませんよね。

 ですからもう計画はたくさんです。必要なのは行動です。政府は何を計画しているかでなく、何を実行しているかを教えてほしい。長期計画を立てるのは茶番でしかありません。紙とエネルギーの無駄ですし、無益な会議のために外交官などが世界各地に空路を飛ぶのも燃料の無駄です。

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