
日経ビジネスLIVEのウェビナー「資本主義の再構築とイノベーション再興」で、英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授と登壇したAI(人工知能)ベンチャー、エクサウィザーズの石山洸社長。オズボーン教授は同社顧問である。そして、単なる「ご意見番」としてではなく、社内の研究でもオズボーン教授の研究成果による「社会課題解決」の思考実験を展開してきた。このほど同社の研究員が、イノベーション研究における経営学の巨匠、故クレイトン・クリステンセン氏とオズボーン教授の研究に、興味深い関係を発見したという。ということで、ウェビナーのスピンオフ企画として早速、寄稿していただいた。マイケル・オズボーン教授と石山洸社長が登壇するウェビナーのアーカイブ映像・記事はこちら。
岸田新内閣の「新しい資本主義」と「令和の所得倍増計画」に注目が集まっているが、筆者はサラリーマン時代に、本当に所得が倍増するという経験をしたことがある。入社8年目、突然の5段階特進。その理由は、デジタル・イノベーターに認定されたからだ(何それ?という突っ込みはひとまずお許しいただきたい)。
現在、日本でも多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に挑戦している。一方で、それを支えるデジタルイノベーターが少ないといわれているのが現状だ。しかし、本当に社内にデジタルイノベーターは存在しないのであろうか?
実は日本企業の社内には、デジタルイノベーターの卵がたくさん潜んでいる。手前味噌だが筆者の事例は、コマツと並んで日本のDXの成功事例としても度々引用されるリクルート・ホールディングスだ。同社は14年に上場して以降、成長を続け、この原稿を執筆している2021年の11月18日時点の時価総額は、同社は14年に上場して以降、成⻑を続け、この原稿を執筆している時点での時価総額は、上場時から約6倍増と倍増を遥かに超えた水準となっており、筆者がこうして取り上げるに値するだろう。同社の持株会に参加していた従業員も利益を享受している。
だが、本気でデジタルイノベーターを発掘している企業はもちろんリクルートだけではない。
実績でフラグが立てば子会社に転籍可能に
噂によれば、あのトヨタ自動車グループ内でもIT(情報技術)リテラシーの高い人材を発掘し、フラグが立った人材はMaaS(マース)やスマートシティーなどに取り組む子会社へ出向している。出向から2~3年がたった後、再びアセスメントをして一定以上のスコアならば転籍できるというような仕組みが始まったそうだ。デジタル・イノベーターを見つけられるか、それは企業努力次第である。
デジタル・イノベーターに必要な「未来のスキル」は?
それでは、社内のデジタル人材の卵はどのように発見できるだろうか? そのヒントとなるのが英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授による「未来のスキル」だ。もともと、オズボーン教授は「AIが雇用を奪う」研究で有名だ。だが、この研究の後、「それならば、逆に、AI時代に人間が身につけるべきスキルは何か?」という問いに答えるために、AI時代の「未来のスキル」という論文を書いている。
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