<span class="fontBold">「日経ビジネスLIVE」とは:</span>「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト
「日経ビジネスLIVE」とは:「読むだけではなく、体感する日経ビジネス」をコンセプトに、記事だけではなくオンライン/オフラインのイベントなどが連動するプロジェクト

 日経ビジネスLIVEでは、10月5~7日の3日間にわたり「The Future of Management 2030:資本 主義の再構築とイノベーション再興」と題したオ ンラインセミナー(ウェビナー)を開催。世界中の経済・経営学の英知を結集して、2030年の企業とマネジメントのあるべき姿について意見を交わしました。

 10月7日の特別パネル討論「米中対立と世界のサプライチェーン危機」では、米ハーバード大学日米関係プログラム所長のクリスティーナ・デイビス氏と、サントリーホールディングスの新浪剛史社長、解説に経済産業研究所副所長の渡辺哲也氏が登壇。米中の対立関係が世界のサプライチェーンにもたらす経済的・地政学的な危機や、今後必要となる備えについて討論しました。

 今回はウェビナーの後半を、テキストで配信します。米中対立関係の変化が日本企業に与える影響、保護主義復活の懸念が高まる世界で日本が勝ち残るためのイノベーションを生み出す方法について探ります。視聴者からの質問にも答えました。

※日経ビジネスLIVEで実施したウェビナー(2021年10月7日開催)の再配信です。動画アーカイブはこちら

前回から続く)

クリスティーナ・デイビス氏(米ハーバード大学日米関係プログラム所長、以下デイビス氏):日本経済では、過去の発展を主導した企業が引き続きイノベーションをけん引していくでしょう。日本にはロボティクスの中でも特に需要が高い工業ロボットのメーカーが多く、電気自動車(EV)分野も強いです。

 サービス産業が今の日本経済に占める割合は大きく、オムロンなどが手掛ける医療機器・サービスと共に、日本独自の社会保障モデルをうまく輸出できるか注目しています。観光業の成功には、地方をグローバルなインフラとつなげる施策が必要です。

 実は私は最近、農業の研究を始めたのですが、日本の農作物を世界で販売してほしいと切に願います。サントリーの食品はもちろん、愛媛県のみかんや(三重県の)松阪牛など、日本には高価でも世界が求める商品があります。

 IT(情報技術)分野では、企業と大学との連携強化を求める声があります。米スタンフォード大学はシリコンバレーと連携しており、ハーバード大学などもボストンに集積するバイオテクノロジー企業と緊密に連携しています。

産業政策は、知財保護や競争に重要

 産業政策は、知的財産権や公正な競争を守る上で必要です。各国政府は高い透明性と厳密な審査を伴うサプライチェーンのルール作りに向けて協力すべきです。こうしたルールがあることで、安全保障上のリスクとして外国資本による参入や買収が制限される商品分野がごく少数に限られると、安心できるからです。

 イノベーションを生むカギは公正な競争ですが、残念ながら世界では公正な競争が後退しています。政府が自国企業を支援するため、対立国より多額の補助金を拠出するのは財源の無駄遣いです。

 これを避けるため必要なのは、相互監視システムです。補助金の制限状況に加え、国内主要企業への保護政策や輸出品への補助金を打ち出していないことを、各国が確認し合えるシステムの構築は非常に重要です。

 日本は中国に対し、問題視されている政策を改革するよう説得し、それに応じなければ諸外国が団結して対抗することを示すべきです。米国だけでなく日本や欧州、東南アジアも中国との貿易をやめる恐れがあることを突きつけるのです。

 岸田新政権については、今後の国内政策を楽しみにしています。イノベーションや人的資本への投資は進むでしょうか? 岸田政権はセーフティーネットから誰も取りこぼさない「新しい資本主義」を掲げています。その一方で労働力の流動性を高め、企業が新しいチャンスを生かして組織を再建・再編できるようになると期待しています。

渡辺哲也氏(経済産業研究所副所長、以下渡辺氏):デイビス所長、ありがとうございました。最近の米中関係や、包括的及び先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)について、新浪さんのご意見もお伺いできますでしょうか?

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