SBIは侵略者なのか

 SBIホールディングスが新生銀行を子会社化すべくTOB(株式公開買い付け)をかけている。詳細は一般報道に譲るが、一投資家としてひしひしと感じるのは、事案の本質の見えづらさだ。SBI・新生銀行両社の開示がポジショントークであふれ、多くのメディアは劇場型報道に終始し、本質がぼやけている。

 メディアは、たいてい次のように報じる。2021年3月、新生銀行がSBIからの提携案をよそに、マネックス証券と金融商品仲介業務で包括提携した。SBIはその経緯に不信感を募らせ、敵対的TOBを断行した。これは、資本の論理で新生銀行の独立経営を脅かす、銀行では異例の敵対的買収だ、といった具合だ。

 SBIを侵略者に仕立て上げるこの論調は偏見に満ち、本質をむしろ見えづらくしている。つまるところ、新生銀行は国への借金を返せない長期パフォーマンス不振銀行で、SBIは大きなリスクを背負ってそれを変えようとする、待望の仕掛け人ではなかろうか。

地銀業界・ネット証券業界・新生銀行のいま

 この点を考察するうえで、(1)地方銀行業界、(2)ネット証券業界、(3)新生銀行、それぞれの現状を手短に振り返る。

(1)地銀事情
 地方銀行業界はいま、待ったなしの危機にある。低金利政策のもと、地銀の収益は軒並み悪化。直近の決算では全国地銀の半数余りが赤字または減益だった。預金を集めて融資に回し、余った資金を円債中心の運用で収益確保する従来モデルが立ち行かない。

 地銀再編で業界を合理化しようにも、従来型の資本統合ではコストが高すぎるとされる。システム統合コストに加え、近隣同士の地銀統合の場合、長年ライバル関係にあったチームとカルチャーを融合させていく課題もある。その割には重複店舗が限られ、節約効果が大して望めない。結果、“資本”の統合が無理なら“機能”の統合だけでも急ぎ、新しい生き方を見つけないと死ぬほかないとの指摘すらある。

(2)ネット証券事情
 ネット証券業界も、大手だろうと安泰ではない。2021年5月、楽天証券は口座数600万突破を発表。Eコマース事業で培った楽天商圏で使える楽天ポイントを武器に、3月に600万口座に到達したSBI証券を猛追する。 

(出所:<a href="https://corp.rakuten.co.jp/news/update/2021/0519_01.html" target="_blank">https://corp.rakuten.co.jp/news/update/2021/0519_01.html</a>)
[画像のクリックで拡大表示]

 セクターの垣根を越えた競争激化に加え、ネット証券はいま手数料無料化の流れの渦中にある。結果、大手各社は、従来の取引手数料ビジネスから資産運用ビジネスに舵(かじ)を切っている。

 米国では、証券会社と営業マンが分離しているところが多い。証券会社は取引プラットフォームを提供し、営業マンは独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)として顧客にアドバイスを提供することで、顧客からの報酬を折半する。一方、日本ではいまだに対面証券会社が強く、2000兆円近い個人金融資産のほとんどが動いていない理由の1つがIFAの浸透の遅れという指摘もある。

続きを読む 2/4 当事者と報道の論調

この記事はシリーズ「新世代アクティビストが考える個人株主ガバナンス」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。