16世紀型ステークホルダー主義への原点回帰を

 ステークホルダーが法人の永続性への関心と責任を失った会社では、“野放し”経営者による利益相反リスクは甚大なものになる。ばらまき公約を打ち出し、当選した後は国を仲間内で私物化する政治家さながら、経営者は組織票を固め、浮動票の不活性化を図る「選挙屋」に成り下がる。

 持ち合い株解消が主流の今のご時世に、付け焼刃的な資本業務提携を装って対抗株主の弱体化にいそしむ保身経営者。TOBや株主提案など、経営陣の保身を脅かす行為をひとくくりで「ハゲタカ行為」と糾弾する広報姿勢。会社議案以外に株主に選択肢のない株主総会で、議決権行使者に株主優待で報いて定足数と決議要件を満たすシャンシャン総会。

 日本の「株主民主主義」を脅かすこれらの危険行為が、適法にまかり通る。一連の事象からは、お世辞にも主人公である法人の利益を優先する想いは感じられず、選挙屋とフリーライダーたちがドヤ顔で「ステークホルダー」を自称するさまに違和感を禁じ得ない。

 何かを盗まれても、所有者がそれを気に留めなければ犯罪は表ざたにはならない。会社の役員が法人を私物化しても、株主や取引先が目先の株価と取引以外に無関心であれば、それで終わってしまう。選挙屋は、まさにそこを突いてくる。

 経営者が特定の行為により個人的に利得を手にできる立場にあるのであればよほど慎重に公明正大な手続きを踏む必要があるし、ステークホルダーは高い関心をもって監視し、意思表明をする必要がある。ここで肝心なのは全ステークホルダー間の緊張感だろう。一方が本気で力を入れない綱引きは、成立しない。

 会社とはあくまで「受託者 vs 委託者」の構図であり、それが「選挙屋+フリーライダー vs無関心者」の構図に陥るか否かは、500年前から委託する側の関与にかかっている。だから、「アクティビスト従業員」「アクティビスト取引先」「アクティビスト地域社会」、そして「アクティビスト個人株主」がどんどん増えてほしい。

 「蚊と一晩同じ部屋で過ごし、ちっぽけな存在の影響力を思い知りましょう」。チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は、こう言っている。株数を1単元しか保有しておらず、「自分の議決権行使に意味はない」と思い込んでいる個人投資家にぜひ聞いてほしいメッセージだ。小さな蚊が持つ大きな影響力を忘れぬことこそが、本当のステークホルダー資本主義への一歩となる。

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