国が進める「スーパーシティ」構想が、全国の多くの自治体に未来の姿を考えるきっかけを与えたことは間違いない(前回の記事:スーパーシティはSFにあらず 前橋市が描く未来都市)。では、未来の都市像はどうなるのだろうか。スーパーシティへの複数の応募に関わっている建築家の隈研吾氏に聞いた。
複数の自治体のスーパーシティへの応募に関わっています。どんなテーマを持って取り組んでいるのでしょうか。
隈研吾氏(以下、隈氏):神奈川県鎌倉市、愛知県と常滑市、沖縄県石垣市ではアーキテクトとして全体構想を練り、岡山県吉備中央町では顧問として助言しています。
スーパーシティというと、どうしてもテクノロジーやDX(デジタルトランスフォーメーション)が過剰に評価されているところがありますが、僕はDXによってヒューマンに戻ることが重要だと考えています。
20世紀の都市は、基本的にコンクリートと自動車で成り立ってきました。コンクリートでビルを高層化できるようになり、自動車で巨大な流通をさばけるようになった。それで巨大都市が出現し、地球環境が破壊されたと僕は思っている。それをどういうふうに救うか、コンクリートと自動車からどうやって都市を解放するか、というのがスーパーシティの一番の役割であり、テーマだと思っています。
未来都市というとデジタルやテクノロジーに寄りがちですが、もっと人間的な要素を盛り込んでいきたい、と。
隈氏:そうですね。今、僕が関わっているところではそういう提言をしています。
「つるつるぴかぴか」は古くさい
具体的にどんな青写真を描いていますか。

1954年生まれ。90年、隈研吾建築都市設計事務所設立。慶応義塾大学教授、東京大学教授を経て、現在、東京大学特別教授・名誉教授。(写真:古立 康三)
隈氏:皆さん、未来都市というと、つるつるぴかぴかの都市をイメージするかもしれません。僕はもっと原始的なものに変えていくことを考えたほうがいいんじゃないかと思っています。
原始的というのは、例えばその地域の自然素材を使って、空調に頼らないような生活のこと。そこにDXを生かす。そういう方向で考えてほしいという話は、ずっとしていますね。つるつるぴかぴかの都市にするというのは今、古くさく見えるんですよ。
スーパーシティ構想には、最新技術を活用したいという思いを持った民間企業も多く参画しています。
隈氏:民間企業の方々は、いろいろな技術を持っています。だからこそ僕みたいな立場の人間が「社会は、都市はどうなるのか」という大きな哲学をしっかりと示さなきゃいけないと思っていますね。
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