コロナ禍がきっかけとなり、日本のDXの遅れがあらわとなった。日本のデジタル政策について国はどのように考えているのだろうか。本連載では、この連載では、『Makuake式「売れる」の新法則』を発売したマクアケ共同創業者・坊垣佳奈氏が、自民党・参議院幹事長の世耕弘成氏を迎えて話を聞く。

<span class="fontBold">世耕弘成(せこう・ひろしげ)</span><br>自民党・参議院幹事長。1998年に参議院和歌山県選挙区の補欠選挙で初当選し現在5期目。内閣官房副長官や経済産業大臣などを歴任。(写真=的野弘路)
世耕弘成(せこう・ひろしげ)
自民党・参議院幹事長。1998年に参議院和歌山県選挙区の補欠選挙で初当選し現在5期目。内閣官房副長官や経済産業大臣などを歴任。(写真=的野弘路)

新型コロナウイルスの感染拡大で、ネットで物を買う人が増えています。こうした消費の変化をどのように見ていますか?

世耕弘成(以下、世耕):大きな変化だと思います。今まで店舗でしか物を買ったことがない人も、ネットで買い物をするようになった。アフターコロナになっても、オンラインで物を買うことはそのまま習慣になるでしょう。

 オンライン飲み会などはコロナが収束したらやらなくなりそうですけど、ネットの買い物はなくならないでしょうね。みんな、普通の買い物と何ら変わりないと気づいたのではないでしょうか。アパレルはまだリアルのメリットがあるかもしれませんが、あまりサイズを気にしない部屋着などはオンラインでも問題ないですから。

 若い人だけではありません。僕の母親は81歳で、今までオンラインで買い物をしたことがほぼありませんでした。でも先日、「ポイントを使ったら安く買えた」と興奮していましたよ。近くに住んでいる弟が教えて、すぐに理解したようです。高齢の母にとって、買い物は大変だったんです。特にお米や水とか、重いもの。それが全部家に届いてしまうのですから。

 そう考えると、リアルの店舗は今後どう生き残っていったらいいか、真剣に考えていくべきです。今、百貨店が苦境に立たされていますが、これは一過性のものではないでしょう。

百貨店の価値は、コミュニケーションにある

リアル店舗のメリットは、店員さんが商品について教えてくれて、よく理解した上で買い物ができることです。でも、お客さんに届くまでにいろんな工程を挟んでいるので、作り手の思いが直接伝わらないこともありますね。

世耕:リアル店舗も、DXが鍵を握ると思います。リアル店舗がネットに対して勝っているのは、実際にモノに触れることができ、しっかり確認できるところです。それから、販売員の商品知識でしょう。ネットに出ていない説明を聞いて、ついつい買ってしまうことはよくあります。リアル店舗の弱点は、まだまだ改善できる点が多い。僕は百貨店がとても好きで、だからこそ気づいた改善点です。

 まず、配送を頼むために家の住所を毎回書かなければいけないこと。百貨店のクレジットカードを持っていたら、住所が分かっているはずです。それなら、いちいち住所を書かなくても自宅宛てに送ることができるでしょう。特に僕は、隣の人に住所をのぞかれるのが嫌なので、書かなくていいようになったらうれしいですね。

 それから、在庫の確認に時間がかかること。ネット通販ならすぐにできますが、リアルだと数分ほどかかってしまいます。バックヤードに探しに行かなくてもその場でタブレットを使い検索し、「今はこのサイズならあります」「日本橋から取り寄せたらすぐ来ます」などと教えてもらえるとありがたい。

 寸法も百貨店内で共有できるようになったらいいと思います。僕は新宿の百貨店でスーツやワイシャツを作っているので、店は僕のサイズを持っているわけです。同じ店の別の売り場に行ったときにまた試着するのは時間がかかるので、「ここのセーターは世耕さんのサイズならMがぴったりです、ちょっと袖が長いけどまくれば大丈夫」というふうに教えてくれたらすぐに買えます。

 これらの時間が、僕にとってはもったいないんです。百貨店に行っている2時間のうち、30分ぐらいは試着や在庫確認や伝票記入の時間になってしまっている。その時間があれば、僕はあと2品は買い物していますね。

 この話を、百貨店協会の新年会の挨拶でしました。「分かりました、やります」と言ってくださって、その後ワイシャツが全部オンラインで注文できるようになりました。でも、その改善の方向性は違うように思います。ワイシャツこそ生地に触って選びたいですから。

 リアル店舗の本当の強みや価値は、そこではないと思うんです。ワイシャツこそ触りたいし、スタッフと話したいんです。「これってシワになりやすいの?」「どういう織り方なの?」とかね。その説明を聞いて、寸法をいつものサイズにしてもらえたら、買い物が3分で済むでしょう。

 リアル店舗の本当の価値を、経営者が理解してくれたら、百貨店のサービスはより良くなるはずです。デジタルの時代でも、やっぱり販売員とのコミュニケーションはしたいです。百貨店の価値はコミュニケーションだと僕は思いますね。

続きを読む 2/2 DX化が遅れている日本

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