コロナが浮き彫りにした日本の「残念な」脆弱性
「マスクも給付金も届かない日本」。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会経済の大混乱は、今まで見過ごしてきた日本社会の脆弱性を改めて認識する大きなきっかけとなった。世界第3位の経済大国として総額233.9兆円にも及ぶ巨額の対策予算を準備しながらも、布マスクひとつ配るのにも手間取る政府の対応は、感染の不安や社会経済活動の低迷に打ちのめされている国民の失望を呼んだことは記憶に新しい。
何も政府だけが悪いのではない。民間企業の実情も決して褒められたものではなかった。20年4月の緊急事態宣言発令を受けて、「オフィス勤務者の7割減」を目指したテレワークの推進が行われたが、宣言対象の7都府県のテレワーク実施率は38%にとどまった(パーソル総合研究所調べ)。米Google社の提供する携帯電話の位置情報を使って米英と比較しても、日本は「職場訪問者数=出社率」が高い(図表1)。

その理由の一例は、「押印手続きの処理」や「郵送されてくる月末締めの請求書処理」などの業務であり、日本企業の仕組みがいかに旧態依然たるかが明らかになった。
そして、雇用の面でも日本社会の残念な脆弱性が浮かび上がった。コロナの影響による経営状況の悪化の中で、企業は「女性活躍」といった言葉で持ち上げていた女性、特にパートやアルバイトなどの非正規職女性の雇用が減ったのである。内閣府男女共同参画局の調査によれば、雇用の不安定状況は女性に対するドメスティック・バイオレンス(DV)や性暴力などの被害も増やしている。女性を雇用の調整弁に使ったといわれても仕方がない状況になっている。
政府、企業、社会、様々な面における脆弱性を今後どう変えていくか、日本の将来はその点にかかっていると言ってもよい。
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