「女性」と「生産性」以外に解決策はない

 1047万人という数字は現在の労働力人口の約15%にも匹敵する。この空前の人手不足を解消する手立ては、実はあまりない。前出のパーソル総合研究所は、①シニア人材、②外国人、③女性、④生産性向上、の4つの対策を提言しているが、既に高齢男性の多くが働いている現状と、コロナの影響が長期化し外国人の受け入れが進まない可能性を考慮すると、結局は③女性、④生産性向上の2つの対策に多くを頼らざるを得ない。

 そして、少子高齢化は人手不足とともに介護の問題も深刻化させる。ある推計では2030年には認知症患者数が約800万人に増加する。家庭内介護者の65%が女性であることも考えると、「女性にもっと働いてほしい」、でも「家で高齢者の介護もしてほしい」。女性に対してこうした相矛盾する2つのことを同時にお願いせざるを得ないのが、これからの日本の実態である。

 女性に活躍してもらうためにも、④生産性向上は待ったなしである。そして、生産性向上は、何も企業だけに必要なのではない。企業も社会も家庭も、今のままのやり方では早晩立ち行かなくなる。社会全体の生産性向上こそが求められている。

デジタル庁が先頭に立って日本社会の変革を

 さて、そのようなタイミングでデジタル庁が発足した。デジタル庁はまずは行政システムの効率化や統一化に取り組む予定といわれている。2022年度の予算規模は概算要求で5426億円と巨額である。

 デジタル庁をスタートするにあたって、社会全体の生産性向上を大きな目標に掲げてはどうだろうか。今回明らかになった脆弱性の多くは、創意工夫である程度解決できるものが多い。既に「押印手続きのハンコの処理」については、河野太郎規制改革相の指揮のもと、まずは行政手続きの多くで不要になる。同様に民間の取引でも「ハンコ」以外の手段への置き換えや手続きそのものの見直しが進みつつある。

 そして、ハンコ以上にテレワークの障害になっていた「請求書の処理」も電子化の動きが進みつつあり、民間を中心に電子インボイスの導入検討が進んでいる(図表3)。電子インボイスが導入されれば、単に「請求書の封筒を開けるために出社する」ことがなくなるだけでなく、企業の事務処理部門の自動化・省力化の大きなきっかけとなり得る。実は、これらの取り組みの検討にはデジタル庁も深く関与するとのことで、これらの取り組みが社会に広く普及すれば、日本社会全体の生産性向上にも大きく寄与する。

電子インボイスは生産性向上に寄与する
電子インボイスは生産性向上に寄与する

 「ピンチはチャンス」「必要は発明の母」という言葉があるが、日本社会の未曽有の人手不足は、社会全体の生産性を飛躍的に向上させるきっかけになるだろう。

 デジタル庁はこうした絶妙なタイミングで発足した。社会全体のデジタル化によって「無理」「無駄」を取り除き、女性、さらには国民すべてにとって、より良い社会づくりの先頭を走ることこそが、デジタル庁の使命だと思うのだが、いかがだろうか。


(写真:umaruchan4678 /Shutterstock.com)
(写真:umaruchan4678 /Shutterstock.com)
コロナ制圧 その先の盛衰』(日経プレミアシリーズ)

新型コロナの「長い長いトンネル」の向こうにはどんな世界が待っているのだろうか?

 ワクチン接種の進行により、22年春には社会経済の正常化が見えてきた。
 しかし、「コロナ後」の日本社会は、「コロナ前」とは大きく異なる。 それは、
1 従来以上の人手不足の深刻化、
2 コロナでとどめを刺された低採算企業の淘汰・退出と業界再編、
3 必然的な社会・企業・行政のデジタル化とそれに適応できない中間管理職層の消滅、等である。
 この大きな変化への対応の可否が、日本が「新しい高生産性・躍動感ある社会」となるか、「衰退が加速し、世界から見捨てられ、忘れられる社会」となるかの大きな境目となる。
 政府に数々の提言をしてきたキーパーソンが、コロナ制圧への道筋とアフターコロナの課題を指し示す。

梅屋真一郎(著) 日本経済新聞出版

この記事はシリーズ「そろそろ、コロナの出口論議を始めませんか」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。