フリマアプリ大手のメルカリは12月16日、プロ野球パリーグ6球団が出資するパシフィックリーグマーケティング(PLM、東京・中央)と共同でNFT(非代替性トークン)を使ったサービスを開始した。

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 年内にシーズン中の名場面を切り取った動画コンテンツの販売を始める。メルカリは4月に全額出資子会社のメルコイン(東京・港)を設立し、NFT関連事業の検討を進めてきた。なぜこのタイミングでPLMとタッグを組んでサービスを開始するのか。メルカリでNFT事業を担当する伏見慎剛執行役員に聞いた。

<span class="fontBold">伏見慎剛(ふしみ・しんご)氏</span><br />メルカリ執行役員NFT担当。メルカリの子会社で暗号資産やNFT事業に取り組むメルコインの取締役も兼務する(写真は12月16日の記者会見時のもの)
伏見慎剛(ふしみ・しんご)氏
メルカリ執行役員NFT担当。メルカリの子会社で暗号資産やNFT事業に取り組むメルコインの取締役も兼務する(写真は12月16日の記者会見時のもの)

メルカリはパシフィックリーグマーケティング(PLM)と共同で、NFT(非代替性トークン)を使ったサービスを年内に開始する。NFT事業への参入を決めたのはなぜか。

メルカリの伏見慎剛執行役員(以下、伏見氏):我々はフリマアプリの「メルカリ」を通じて、実物の個人間取引を仲介してきた。今後、実物だけではなくデジタル資産の取引が拡大していく中、メルカリというマーケットプレースをデジタル資産にも広げていくことが重要になると考え、NFT事業に参入した。

 プロ野球のパリーグでメディア事業を手がけるPLMとの協業に至ったのは、両社のタイミングが合ったからだ。プロ野球界は新型コロナウイルス禍による入場者制限がある中、ファンビジネスやファンとのコミュニケーションをどうすべきなのかという課題を持っていた。

 一方でメルカリとしては、今の日本でNFTのマーケットプレースをつくっても、多くの人にリーチできるコンテンツがない。ならば、マーケットプレースを提供するだけではなくコンテンツを作るところから進めたいと考え、協業に踏み切った。

 ファンにとっては「NFTってよく分からないけど、プロ野球に関する『この何か』が面白いね」となればいい。そういう体験があると、急に人々の関心が変わるだろう。結果としてNFTを使ったサービスを使う人口が増えたらいいと思う。

NFTの購入者に対して、新たにどのようなファンビジネスを展開できるのか。

伏見氏:特定のNFTを購入したお客様に、リアルでのタッチポイントを提供するという特典の設計はあり得る。NFTを所有する人限定のファンイベントやシーズンオフのキャンプに参加できるといった、リアルとデジタルの接点に特典をつくってファンビジネスを進化させられるだろう。

 他にもNFTには様々な用途がある。直近ではNFTが鍵の代わりになっているケースがあり、特別に入れる場所を球場の中に設けることもできる。可能性を制限せずに多くのことにトライしたい。

 パリーグ自身、動画配信サービスの「パ・リーグTV」を手がけるなど、新たな挑戦を進めている。今回、NFT事業に参画したのも、若年層にアプローチする一つの手段としてではないか。