一方、PLM側の狙いは、プロ野球の新たな楽しみ方を提供し、ファン層を拡大することにある。

 プロ野球は現在、苦境に立たされている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、20年シーズン以降、試合は無観客や観客数を制限した中で実施されてきた。主要な収益源であるチケットや飲食、グッズの販売が落ち込み、売り上げがコロナ前から半減した球団もある。ファンの来場が制限されたことによってプロ野球との接点が少なくなり、ファン離れも懸念されているという。

デジタルネーティブな層を取り込む

 現状打破へ活用を急ぐのがデジタル技術だ。PLMでは以前から、リーグ公式動画配信サービス「パ・リーグTV」やYouTubeチャンネルを通じて、試合の中継やハイライト映像の配信などを実施してきた。NFTを使った商品を新たに加え、ファンのつなぎ留めだけでなく、デジタルネーティブな若者を中心に新たなファン獲得へ一層取り組みたい考えだ。

 PLMの根岸友喜CEO(最高経営責任者)は会見で、「パリーグは日本で1607万人に関心を持ってもらっており、(今回のサービスの)プライマリーのターゲットだと思っている。我々は25年までにパリーグファンを2000万人にする計画で、400万人のギャップを埋めるためにもデジタルネーティブの若い人を中心にエンゲージメントが高そうなサービスはどんどんやっていく」と意気込んだ。

 もっとも、今後展開するNFT事業を含めた今回のサービスが、ファンのつなぎ留めや拡大につながるかは未知数な部分も多い。それは、NFT自体の認知度が一般消費者にまだ広がっていない段階のため、限られた人しか利用しないコンテンツにとどまる可能性も少なくないからだ。

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 プロ野球ファンの減少はコロナの影響だけではなく、これまでも慢性的に進んできた。三菱UFJリサーチ&コンサルティングとマクロミルによる共同調査によると、13年に3448万人だったプロ野球のファン人口は、21年に2279万人と10年足らずで3割以上減少した。

 サッカーJリーグも同様に、ファン人口は900万人を割り込んだ。背景には地上波などでプロスポーツに接する機会が減少したことや、公園で球技が禁止されて子供たちがスポーツ自体を気軽に楽しむ環境が失われてきたといった構造的な問題が指摘されている。

 スポーツとIT企業のタッグは、メルカリとPLMの取り組みに限らない。22年2月にはミクシィがJリーグのFC東京を子会社化すると発表しており、「今まで培ってきたコミュニケーションのノウハウやIT技術を生かし、スポーツのポテンシャルを引き出したい」(ミクシィの木村弘毅社長)考えだ。メルカリ自身も、Jリーグの鹿島アントラーズを傘下に持っており、スポーツとIT企業の距離は年を追うごとに深まってきている。

 スポーツビジネスに詳しい野村総合研究所の滑健作氏は「子供を中心にファンのすそ野を広げなければ国内スポーツは今後も衰退の一途をたどる」と警鐘を鳴らす。PLMの根岸CEOが語るように、失われてきたスポーツとの接点をデジタルの力でいかに生み出し浸透させられるかが、今後の日本のスポーツ産業を維持、発展させるカギを握ることになりそうだ。

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