メルカリとプロ野球パリーグ6球団が出資するパシフィックリーグマーケティング(PLM、東京・中央)は12月16日、シーズン中の名場面を切り取った動画コンテンツの販売を始めると発表した。年内に提供を始め、デジタルデータに希少性や唯一性を持たせる非代替性トークン(NFT)を活用して展開していく予定。PLM側は、デジタルを武器に新たなファンを獲得できるのか。

 年内に開始する新たなサービスの名は「パ・リーグ Exciting Moments β」。まずは、2021年シーズンの名場面を収録した18種類のデジタルデータを数量限定で販売する。価格は2000円(税込み)からで、オリックスの山本由伸投手やソフトバンクの千賀滉大投手ら人気選手の商品は2万5000円(同)のものもある。購入者は自分の好きなシーンを購入し、視聴したり、自分だけのコレクションとして保有したりできる。

メルカリとPLMが販売を始める「パ・リーグ Exciting Moments β」の販売画面
メルカリとPLMが販売を始める「パ・リーグ Exciting Moments β」の販売画面
[画像のクリックで拡大表示]

 販売開始当初は、いわば試合映像の「切り売り」販売ともいえるサービスだが、22年をめどにブロックチェーン技術(分散型台帳)を用いたNFT事業へと移行していく予定だ。今後、コレクションの再販機能の提供や、購入者同士のコミュニティーを活性化させるツールも検討しているという。

 NFTはデジタルデータに識別情報を持たせ、データの改ざんや複製を防いでデジタル作品の所有者を証明できる。デジタルアートのほかスポーツビジネスでも活用が進んでおり、米プロバスケットボールNBAのシュートシーンを編集した動画NFTには約2000万円の値が付いたものもある。国内でもPLMが9月に埼玉西武ライオンズと商品の販売を始め、セリーグの横浜DeNAベイスターズも親会社のディー・エヌ・エーと11月にコレクションサービスを始めるなど注目が集まっている。

「NFTは大衆化していない」

 メルカリが今回、パリーグと手を組んで新たな商品開発に乗り出した狙いは、注目度の高いコンテンツを取り込むことでマーケットプレースの拡大を図ることにある。主力のフリマアプリは月間利用者数が約2000万人。累計出品数が25億品を超える中、さらなる成長領域に定めたのがNFTをはじめとした暗号資産やブロックチェーンの領域だった。

 今年4月に暗号資産やブロックチェーンに関するサービスを展開する子会社メルコイン(東京・港)を立ち上げた。サービスの企画や開発をする中で第1弾として選んだのがPLMとのタッグだった。今回のサービスを主導するメルカリの伏見慎剛執行役員は会見で、「ブロックチェーンやNFTはなかなか難しくて大衆化していないのが現状。日本に非常に根付いているプロ野球の文化を使って一緒に大衆化していきたい」と話した。

次ページ デジタルネーティブな層を取り込む