ビズリーチ・リスキリング調査(企業編)

 では企業やビジネスパーソンはリスキリングに対してどのように考え、行動に移しているのか。

 人材サービス会社のビズリーチは21年10~11月、経営者や人事担当者といった企業側と、企業で働くビジネスパーソンのそれぞれにリスキリングの実施状況や今後の動向を調査した。この調査からは2つの特徴が浮かび上がる。1つは企業と個人のいずれもがリスキリングを必要不可欠なことと捉えている点。もう1つは、個人の危機感に比べ、企業の危機感が薄い点だ。

 まずは企業が対象の調査(回答企業は245社)から見ていこう。

[画像のクリックで拡大表示]

 リスキリングの実施状況を尋ねたところ、既に実施していると回答した企業は全体の2割となった。今後取り組むか検討中の企業も含めると6割近くがリスキリングに前向きな姿勢を示している。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]

 企業が考える対象者は30~40代、課長クラス以下が中心だ。事業を現場で動かしていく働き盛りの人材に、新たなスキルを身に付けて戦力になってほしいという願望が垣間見える。ITスキルを中心に聞いた「身に付けてほしいスキル」はデータ分析・解析がトップ。データ社会で勝ち残るための人材を求めているようだ。

 ただ、多くの企業にとってリスキリングはまだ手探りの段階だ。リクルートマネジメントソリューションズの千秋毅将氏は「企業はリスキリングの『後』を考えていないことが多い」と指摘する。

 それが明らかになっているのが、リスキリングした社員の昇進や昇給に関する設問だ。

[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]

 4割強の企業が、リスキリングが「昇給の対象となる」と回答したものの、その額を聞くと年間の昇給額は5万円以下の企業が3割を占めた。月額にすると数千円程度の上乗せにすぎない。

 今回の調査を担当したビズリーチの伊藤綾・ビジネス開発統括部長は「職階や年齢、資格などで昇給のレンジが決まっている企業が多い。リスキリングに企業の人事制度が追いついていない」と語る。

 年功序列や職階によって賃金を決める企業の場合、現行制度の下では昇給幅に限界がある。本来はリスキリングの導入と同時に人事制度全体の変更も必要になってくるが、そこまで実行できている企業は多くない。

次ページ ビズリーチ・リスキリング調査(個人編)