電子カルテは普及しているが……

 次世代医療基盤法の認定事業者として国内初の認定を受けた一般社団法人ライフデータイニシアティブ(LDI)の代表理事である吉原博幸氏は、「次世代医療基盤法に基づき、患者個人が生まれてから生涯をとじるまでのライフログデータを収集した上で様々なサービスを創出し、日本の健康長寿社会の実現に貢献する事業を目指している」という。「次世代医療基盤法で医療情報の利活用はある程度進んだが、さらに一歩踏み込む必要がある」と話す。

医療情報の利活用は進みつつある
●LDIが想定する医療・健康データの利活用イメージ
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 例えば、医師ががん患者に手術をしたケース。手術後、長期にわたって治療経過や治療薬の効果を追いかけ、この経過をもとに5年生存率などを分析し論文を執筆する。

 だが手術を施した医療機関の手を離れ、転院や自宅療養となった場合、肝心の患者の死亡情報や生存情報を把握するのは難しく、生存率が高まったのかどうかの結論を出すことができない。

 該当患者の生存の有無などの情報は誰に聞けば良いのか――。それぞれの地方自治体が死亡情報などを持つものの、開示を求めても提供を拒否されるケースが多い。その根拠となっているのが、個人情報関連の条例だ。47都道府県、1718市町村、東京23区、100超の広域連合にそれぞれ条例があり、取り扱いが異なる。俗にいう、データ流通の壁となる「2000個問題」だ。

 加えて、国内では電子カルテの導入が加速してはいるものの、医療情報の二次的な利活用を前提としたシステムが十分に構築できているとはいえない。

 医師は電子カルテで、その患者の疾患、治療経過、検査結果などを閲覧することができるが、リポート類などが「構造化データ」になっていない。

 構造化データとは、検索エンジンなどコンピューターが理解できるように、フォーマットを明確にしたもの。PDFなどで管理されているものは構造化データになっておらず、検索などが困難だ。その上、放射線リポートや病理リポートなど電子カルテとは別に部門の専用システムで管理されているケースも多い。

 吉原氏は「認定事業者の努力のみでこうした課題を解することは難しい」という。

 海外の事例を見ても、政府主導のもと、医療システムに対し積極的に投資するケースが多い。条例の壁を取り除き、各市町村に分散されている出生や死亡の情報、学校健診、特定健診などの情報を集約、そして医療情報の利活用を念頭においた電子カルテの事業者への投資や指導を進めていく必要があると吉原氏は話す。

 患者の一生涯に寄り添う、ゆりかごから墓場までの医療連携サービスをどのように実現していくか。認定事業者だけではなく、政府と企業がさらに連携し、時代に合ったサービスを提供することが求められている。

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