飛行機への搭乗だけでなく、電車、バス、さらには徒歩に至るまで、あらゆる移動で「マイル」がたまる全く新しいポイントプログラムが米国から上陸する。その名は「Miles(マイルズ)」。2016年に米シリコンバレーで創業したスタートアップ、コネクトIQラボが手がける。
同社は21年1月に日本法人であるMiles Japan(マイルズジャパン、東京・渋谷)を設立。10月20日から日本でサービスを開始する。ためたマイルの交換先となる「パートナー企業」にはファミリーマート、丸井グループ、JR東日本、そして日本航空(JAL)といった有力企業が並ぶ。サービス開始時点ですでに100を超える特典が用意されている。
新型コロナウイルスの感染拡大によって発令された緊急事態宣言が解除され、徐々に人の移動が再開してきた好機を捉えたいマイルズ。だが、この参入がポイント大国の日本で新たなつばぜり合いの舞台をつくり上げる可能性がある。
米国では75億円相当の価値を交換
マイルズは19年に米国で本格スタートしたサービスで、現在140万人以上のユーザーが登録している。移動で付与されたマイルはECサイトの割引クーポンなどに交換できる仕組みで、これまでに1100万回以上、累計で500億マイル以上が交換されているという。1マイルがどの程度の価値を持つかは算定しにくいが、割引額などから推計すると累計で75億円程度の価値が交換されている。
野村総合研究所の推計によると、日本はポイント・マイレージの年間発行額が1兆円を超える有数の「ポイント大国」。日本ではポイントプログラムが乱立しているだけに、今さら新規参入するのは難しいという側面もある。共通ポイントでは、「Tポイント」「Ponta」「dポイント」「楽天ポイント」の4大ポイントの存在感が大きく、それぞれが携帯電話事業と深く結びついている。マイルではJAL、全日本空輸(ANA)の2社が競っている。
ただ、マイルズは多くの日本のポイントプログラムと比べると大きく2つの点が異なっている。
1つ目は、商品の購入やサービスの利用ではなく、移動に応じてマイルがたまるということだ。ポイントカードを提示する必要もなく、スマートフォンにアプリをインストールしておけば、意識することなくマイルを獲得できる。
具体的には、スマホの位置情報に応じて、1マイル(1.609キロメートル)の移動に対して「1マイル」のポイントがたまる。さらに徒歩なら10倍、自転車は5倍のマイルが付与され、環境にやさしい移動を促すという。どの移動手段を使ったかは移動速度や発進・停止のパターンなどを基にAI(人工知能)が自動で判定する。先行する米国ではマイカー移動が主ということもあり、ライドシェアや公共交通を利用するとボーナスマイルを付与するといった取り組みもある。
2つ目は、ポイント原資を加盟店に負担してもらうという従来のビジネスモデルではなく、特典を提供するパートナー企業への送客により対価を得る点だ。利用者は移動に応じてマイルを得るが、実はこのマイルに金銭的な価値の裏付けがあるわけではない。先述した通り、米国では特典交換によりこれまでに割引など約75億円の価値が生まれた。これに対してパートナー企業は、マイルズからの送客により310億円以上の売り上げを得られたという。
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