フリマアプリの「メルカリ」が利用者拡大へ新たな施策を相次いで打ち出している。10月7日には子会社のソウゾウがアプリ内で事業者が出店できるサービス「メルカリShops(ショップス)」の本格運用を開始。同12日にはメルカリの使い方が学べるテキストや売れやすい商品のリストなどをまとめた「メルカリ入門キット」の販売を全国のセブンイレブンで始めた。9月単月での月間利用者数が2000万人を超える中、成長の再加速を目指す。

「本当にありがたいサービス。早くやっておかないと損だ」。楽天やアマゾン、BASEなど複数のサービスで電子商取引(EC)を手掛けてきた男性は、これから出店申請するメルカリショップスの印象についてそう語る。メルカリショップスはアプリ内に中小事業者や個人が手軽にネットショップを開設できるサービスで、初期費用や月額利用料は無料。出店者は通常のメルカリと同様に販売価格の10%を手数料として支払う仕組みだ。
従来のメルカリでも事業者による出品や、新品の販売はできた。ただ、あくまで「一点物」の商品の取引が目的のため、複数の同一商品を扱う場合は在庫の管理ができないなど事業者の利用には不向きな面もあった。メルカリショップスでは出品画面で商品の色やサイズなどの違いに応じた在庫数の設定が可能になり、より事業者が商品を販売する際の使い勝手がよくなった。
先の男性がメルカリショップスを絶賛するのは、ECに関する知識やノウハウがなくても多くの利用者に出品した商品を周知し、購入の選択肢を提供できるためだ。メルカリショップスに出店した場合、商品はメルカリアプリ内に新設された「ショップ」タブ内に掲載され、利用者はこれまでのアプリ利用の延長線上で事業者らが出品した商品を閲覧できる。つまり、これまでの個人間で取引していたユーザーを客として取り込めるようになった。
メリットはすでに出店をしている事業者からも聞かれる。7月28日に始まった試験運用段階から出店していた事業者は「初めてのECだったがスマートフォンだけで簡単に運用できる。これまでは地元での取引が主だったが全国から多くの注文をもらっている」(松山市の遠藤味噌醤油醸造場)、「初期費用がかからないので、すでに手掛けているほかのECと並行して使える」(山形県高畠町の伊澤商店)と話す。
10%という手数料はEC支援サービスを手掛けるBASE(6.6%強)やSTORES(フリープランは5%)と比べると高い。だが、多くの出店者は「集客しやすいメリットを加味すると割高感はない」と口をそろえる。ソウゾウは試験運用期間の出店数や売上金額などは明かさないものの、EC初出店で1カ月の売り上げが1000万円を超えた事業者もあったという。
不用品の売買といった個人間取引の仲介で成長してきたメルカリ。そもそもなぜこのタイミングで事業者にも出品しやすいようサービスを拡張したのか。
メルカリは決済サービス「メルペイ」の加盟店が新型コロナウイルス禍によるダメージを受ける中で、「事業者が個人と同様にメルカリで商品を販売できるサービスが必要と感じた」と説明する。
一方で、エース経済研究所の澤田遼太郎アナリストは「メルカリの第1の柱である国内でのメルカリサービスを補強する狙いがある」との見方を示す。メルカリは2013年のサービス開始以来、利用者を急速に拡大。21年9月には月間利用者数が2000万人を超えた。ただ、利用者数の伸びに着目すると、17年4~6月期の月間利用者数は前年同期比約61%増だったが、21年同期は前年同期比約12%と伸びてはいるものの鈍化傾向は否めない。
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