政府のデジタル改革により、銀行口座を登録した人に給付金を速やかに出せる仕組みはできつつある。ただ、いつ誰を対象として予算規模をどうするか、個人データの取扱いをいかに統制するかなどは政治判断にかかっている。元財務官僚で財務副大臣も務めた鈴木馨祐衆院議員に話を聞いた。
政府のデジタル・トランスフォーメーション(DX)推進、財政健全化にはどのように寄与できるでしょうか。
鈴木馨祐・自民党財務金融部会長(9月時点):効率性や正確性の向上とDXは、親和性が高い。これまでの手作業を機械が補助し、部門ごとに分断されていたデータをつないで分析、事業改善に寄与することができる。例えば医療費も動向を迅速に把握でき、トレースを進めることで適正化につなげていくことが可能だ。データを効率的に活用する経済社会構造に移行しつつある。

私立開成中学・高校出身、東京大学法学部卒。1999年(平成11年)大蔵省に入省して国際金融政策に携わり、米ジョージタウン大学大学院フェローとして国際政治情勢を分析。在ニューヨーク総領事館副領事や厚生労働省への出向を経て財務省退官、2005年から衆院議員(神奈川7区、当選4回)。財務副大臣、外務副大臣を経て自民党財務金融部会長(2021年9月時点)。
2020年には低所得者のみに給付金をすぐ支給できる手段がなく、国民全員を対象に10万円を配ることとなりました。デジタル改革関連法の成立により、バラマキ型の財政出動は変わりますか。
鈴木氏:今後、給付金のような政策を打つ際に、何を基準としていくかによって必要となる規模は変わる。資産や所得など、判断に用いる基準は様々な要素が考えられる。どのように(給付対象者を)線引きするのが適切なのか、デジタルの世界でデータを活用しやすい状況になったとしても、この観点で政治判断が必要となる。将来、人工知能(AI)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による事務処理が増えたとしても、それらは既に決まったプロセスを迅速に実行していくための手段だ。まず限られた予算をいかに振り分け、目指すべき社会の姿を実現していくのかという政策設計は人の手にかかっている。やはり根源的な価値判断は政治が担う役割だ。
今回のデジタル改革では公金受取口座登録法と預貯金口座管理法の成立により、マイナンバーとひも付けた口座情報の指定が可能となりました。しかし、国民が口座を登録するかは任意なので、再び給付金が必要なときに手間がかかる可能性も残っています。
鈴木氏:他の国ではごく当たり前の議論として、日本のマイナンバーのような制度と銀行口座をひも付けてきた。日本では野党が所得の把握を避けるべきなどと過剰な反応を示してしまい、弱い法案になったのは事実だ。ただ政策実行時の迅速性は必要なので(国民から)理解を頂ければ、登録件数は増えるだろう。
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