少子高齢化など世界に先行して構造問題を抱え、「課題先進国」を自認する日本。しかし、解決の切り札の一つになるはずのDX(デジタルトランスフォーメーション)は遅々として進まない。米国や中国だけでなく、東南アジアが日本を追い越すようにデジタルを活用したイノベーションを起こしつつあるのが現状だ。DXを加速させるには、何が足りないのか。革新のカギを求めて、新興国に飛び出す動きが出始めている。

 インド南部の主要都市、ベンガルールの目抜き通り。富士フイルムが現地企業と協力して今年2月に開業した健康診断センター「NURA」で、医師の診断を支援する人工知能(AI)の実証実験が進められている。

健診センターでは、受診者全員にコーディネーターがつき、検査内容の事前説明や部屋への案内など手厚いサービスを提供しているという
健診センターでは、受診者全員にコーディネーターがつき、検査内容の事前説明や部屋への案内など手厚いサービスを提供しているという

 受診者2000人分の胸部コンピューター断層撮影装置(CT)データをAIが分析し、病変の候補を抽出する。医師はその結果を基に読影のうえ診断し、別の医師がAIを利用せずに行った診断と比較することで、見落とし防止の効果と診断のスピードアップにつながるかを検証する。診断時間の6割削減が期待できるといい、経済産業省の「アジアDX促進事業」に採択されている。

 なぜ富士フイルムはインドを選んだのか。第一は中国に次ぐ人口があり、生活習慣病やがん患者の増加が社会問題化していることだ。インドの男性は唇と歯茎の間など口の中にたばこのような嗜好品を含む習慣があり、口腔(こうくう)がん患者が多いことで知られる。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1792文字 / 全文2394文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「Xの胎動」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。