「デジタル改革により、プッシュ型に近い形で給付金の振り込みが可能になった」。今年5月、平井卓也デジタル相はこう強調した。これまで政府からの給付金は、国民が申請して行政機関が審査・交付するプロセスに膨大な手間がかかっていた。「プッシュ型」は申請ベースでなく、行政がデータから対象者を特定してすぐに給付すること意味する。
その象徴とも言えるのが、低所得の子育て世帯への「生活支援特別給付金」だ。今年5月にデジタル改革関連法が成立し、すぐにこの案件を対象とした。デジタル庁で戦略立案を担う上仮屋尚参事官は「支援が必要な人をピンポイントで把握し、迅速に給付できるようになったのが画期的」と語る。コロナ禍における支援として、児童1人当たり5万円を振り込んだ。足元ではマヨネーズやマーガリンなど食品価格が上昇しており、感染対策で働ける時間が減った1人親世帯などにとっても打撃は大きい。
実はこれまで政府にとって「誰が低所得者なのか」を把握するのは、そう簡単ではなかった。国民の所得データを常にアップデートして管理すればよさそうだが、プライバシーとの兼ね合いもあり、法的な壁が立ちはだかっていた。

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