「メタバース」と呼ばれる仮想空間への関心が高まっている。デジタル空間でキャラクター(アバター)を操り、ゲームやプレーヤー同士の交流を楽しんだり、現実世界のようにコンサートを開いたりと活用法が広がっている。日本でも経済産業省が「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業」と題した報告書をまとめるなど、その潜在力を見いだそうという動きが出てきた。報告書の調査を担当した、KPMGコンサルティングのHyun Baro(ヒョン・バロ)ディレクターと、岩田理史マネジャーの2人に話を聞いた。
KPMGコンサルティングは、早くに「eスポーツアドバイザリー」事業を立ち上げ、最近はメタバースに活動範囲を広げていますね。

航空宇宙工学博士。米国でデータサイエンティスト・研究開発、韓国大手自動車メーカーを経て2017年よりKPMGコンサルティングに入社し、先端技術を活用するビジネスコンサルティングに従事。1990年代の韓国で成長し始めた e スポーツ産業を思春期にユーザーとして体験したことを生かし、2018年に助言・支援を行うeスポーツアドバイザリーサービスを立ち上げ、現在はさらに拡張したデジタルコンテンツアドバイザリーをリードしている。
KPMGコンサルティングHyun Baroディレクター(以下、バロ氏):日本のeスポーツ市場の成長ポテンシャルに注目するクライアントが新規参入する際に、支援するサービスを2018年に立ち上げました。eスポーツビジネスは大きく見るとプロ選手やチーム、大会開催のようなブランドビジネスの要素と、ゲームコンテンツや放送権といったようなIP(知的財産)ビジネスが主軸になっています。
IPビジネスは、特にゲーム会社や出版社が強い力を持っていて、その特徴は、特定の媒体やジャンルにこだわらずに「2次利用」ができることです。そこで2020年、eスポーツから分野を拡大して、「デジタルコンテンツアドバイザリー」部門を設立し、eスポーツ、ゲーミング、エンターテインメント全般、そしてメタバースのような仮想空間ビジネスも扱うこととしました。

大手建設会社のシステムエンジニア、会計系コンサルティングファームのデータ分析コンサルタントを経て、2019年にKPMGコンサルティングeスポーツアドバイザリーに参画。前職ではアナリティクス組織の構築支援やデータ活用支援のプロジェクトを多数経験。また、業界初のクラウド型データ分析サービスの立ち上げにも従事。現在はスポーツを中心に、ゲームや動画などのデジタルコンテンツを活用したビジネスに関する支援にも従事しており、幅広い活躍を見せる。
KPMGコンサルティング岩田理史マネジャー(以下、岩田氏):昔はテレビやゲーム機に依存していましたが、今はスマートフォン1台で様々なジャンルのゲームが楽しめる時代になりました。ネットの世界は画像、文字、動画が中心でしたが、仮想空間は立体性を持っており、キャラクターやアバターを通じて実空間と同じように個人が活動できる魅力があります。
バロ氏:既に海外のゲーム会社だと、オンラインゲーム「フォートナイト」や、仮想空間で建築などを楽しむ「マインクラフト」などが人気ですね。今、メタバースの担い手は、ゲーム会社が中心といっていい。フォートナイトを手掛ける米エピックゲームズのティム・スウィーニー最高経営責任者(CEO)は「メタバース(仮想空間)の実現を目指す」と公に宣言しています。
メタバースの基本となる3次元空間を作ること自体は、特段難しくないし、ものすごく工数がかかるわけではありません。ただ、こうした3次元空間は、理由がなければ人が集まりません。コンテンツの魅力が最も大事です。
メタバースに人が集まる目的が明確な方がよいということでしょうか。
バロ氏:この点、ゲーム業界は充実しています。またゲームのジャンルによってミッション(目的)がはっきりしているので集まりやすい。例えばフォートナイトなら、チームで相手を倒すことがミッションです。なので、メタバースは、ゲーム業界が先行するのではないかと考えています。
メタバースの先駆けといえば、「セカンドライフ」が思い浮かびますが、なぜ浸透しなかったのでしょうか。
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