身体に新しい部位を追加できるとしたら、あなたはどんな姿を選ぶだろうか。千手観音のように無数の腕があったら便利に違いない。背中に翼が付いていたら、天使になった気分が味わえるだろう。ヒトを全く違った姿へと変身させる身体拡張技術の研究・開発が始まっている。「6本目の指」を開発した電気通信大学大学院の宮脇陽一教授に話を聞いた。

電気通信大学大学院の宮脇陽一教授(右)と6本目の指を装着する研究室の学生
電気通信大学大学院の宮脇陽一教授(右)と6本目の指を装着する研究室の学生

なぜ6本目の指を開発しようと思ったのでしょう。

電気通信大学大学院の宮脇陽一教授(以下、宮脇氏):機械を脳と接続して操作する「ブレーン・マシン・インターフェース(BMI)」という研究分野があります。交通事故で足を失った人や、工作機械に挟まれて腕を失った人など、体の一部を欠損した人向けに脳波で操作できる義手や義足などを研究・開発するのが一般的です。

 これに対して私たちは、ハンディキャップを負っていない健常者にとってもBMIは有効ではないかという発想で研究に乗り出しました。ヒトには本来ない身体の部位を、機械で追加するわけです。東京大学の稲見昌彦教授が研究総括を務めている科学技術振興機構(JST)の「稲見自在化身体プロジェクト」の支援を受けています。

 その一環で、研究室の学生や仏国立科学研究センター(CNRS)のゴリシャンカ・ガネッシュ主任研究員と共同で「第6の指」を開発しました。手の小指の隣に装着します。

 今回は脳波で第6の指を制御するのではなく、腕に装着したセンサーで制御する仕組みを採用しました。腕の筋肉に力を入れたときに、筋肉で発生する電気活動を腕のセンサーで読み取り、指を動かします。

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