福祉施設で作られた商品は品質が疑問視され、市場では買いたたかれがちだ。そんな状況を打開すべく、神奈川県秦野市の農園で、障害者らが高級ハーブティーの生産に乗り出した。
JR新宿駅のコンコースで3月下旬、食品の販売イベント「ルミネアグリマルシェ」が開かれた。袋詰めにされたティーバッグの売り場の前で通行人が足を止め、ハーブティーを試飲していく。「これは、気分をリセットしたいときに飲むといいですよ。こっちは食後にすっきりしたいときですね」などと、店員がティーバッグの種類ごとに効能を説明していた。

価格はティーバッグ7個入りの袋で1400円、バラ売りでは1個250円だ。ティーバッグとしては高価格帯といえる。「丹沢HERBS(ハーブ)」のブランド名で、高級茶市場への浸透を図っている。
「1袋もらっていくわ」と、試飲した女性が財布を取り出した。
15人の挑戦
「売れたらうれしいです」。神奈川県秦野市の農園で作業中の女性は、はにかみながらそう言った。

ここは知的障害と自閉症障害者のための福祉施設、弘済学園。一般の会社で働くのが困難な障害者に仕事の場を提供する「就労継続支援」の一貫で、18歳以上の施設利用者15人が2年前から丹沢ハーブを生産している。
この日、施設内の農園では、数人のメンバーが、腐葉土の中に残る大きい葉をハサミで細かく切っていた。腐葉土作りから耕作、加工まで、丹沢ハーブの一貫生産体制が整う。
弘済学園の高橋潔園長は、「品質で勝負する」と意気込む。「すべて手作業」「化学肥料や農薬は不使用」「国産」といった高品質をイメージさせるうたい文句で、ルミネアグリマルシェなどの催事のほか、秦野市内や東京都内の一部の小売店で販売している。
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