「ノバセルの前にノビシロを」

 ノバセルはテレビCMの制作から放映、効果分析までをワンストップで担う「運用型テレビCM」を提唱し、18年1月のサービス開始から4年足らずで売上高67億円(21年7月期)をたたき出すまで急成長を遂げた。22年2月、ラクスルから分社する形で法人化。ラクスルの取締役CMO(最高マーケティング責任者)を務める田部氏がトップに就いた。

 ノバセルの特徴は、ラクスルが培った「勝ちパターン」のノウハウを詰め込んでいることにある。ラクスルは14年、テレビCMの放映を開始し、7億円台(14年7月期)だった売上高を、7年で302億円(21年7月期)まで引き上げた。テレビCMを効果的に打ち、知名度を飛躍的に上げることに成功したのだ。

 まずは放映コストの安い地方のテレビ局で、低予算で制作したCMを複数パターン放映。より顧客獲得効率が高いCMのパターン、放送枠、放映量を可視化した。その上で勝ち筋を見出し、関東など大都市圏でテレビCMを集中投下するパターンを繰り返してきた。

 こうしたラクスルのCMメソッドを切り出して提供すれば、どんな企業でも成長を後押しできると考えて生まれたのが、ノバセルだった。20年4月には、テレビCM効果分析ツールとして「ノバセルアナリティクス」をリリースした。出稿したCMが何時何分何秒に流れるかを特定し、CMの放映効果をリアルタイムで可視化。どのテレビ局の、どの時間帯、どの番組にCMを流せば、最も費用対効果が高いのかを一目で突き止められるようにした。

 安さ訴求型か、品質アピール型か、サービス名連呼型かなど、CMの中身(クリエーティブ)によって視聴者の反応がどう変わるかも分析できる。視聴率だけでは測ることができない広告効果をつまびらかにしたことが反響を呼び、スタートアップから大企業まで、今や利用企業は累計200社超、分析総額は300億円を突破している。

「ノバセルアナリティクス」は放映エリアやCMの中身などによって広告効果がどう変わるかをリアルタイムで可視化する
「ノバセルアナリティクス」は放映エリアやCMの中身などによって広告効果がどう変わるかをリアルタイムで可視化する
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 テレビCMの運用で名を上げたノバセルが、テレビCM以外へ業容を拡大する。そのために生み出したサービスの1つが、冒頭のノビシロだ。キーワードは「マーケティングの民主化」である。

 田部氏によると、テレビCMを放映する企業は年間4000社程度。当たり前だが、ある程度資金力がある企業でないとCM出稿は難しい。うまく運用すれば効果は大きいが、誰もが利用できるマーケティング手段ではないという課題があった。

 それに対して、ノビシロは2万円からという価格設定にした。駆け出しのスタートアップであっても、事業戦略の立案などに気軽に役立ててもらいたいという思惑がある。

 「企業にとって顧客調査はすごく大事だが、いざやるとなると値も張るし、時間もかかる。もっと簡単にサクッと分かるサービスがあったらいいなと思って、開発した。ノバセルの前にノビシロを見つけましょう。伸びしろを見つけられたら、事業をもっと伸ばせますよね、という願いを込めた」と田部氏は語る。

 マーケティングに力を入れたいが、社内に人材がいない企業向けに、ノバセルからマーケターを派遣し、事業戦略の立案から効果検証まで伴走する「ノビシロPRO」というプレミアムプランも用意する。

競合のCM効果まで丸裸に

 22年4月19日には「ノバセルトレンド」というサービスを送り出す。ノバセルアナリティクスが自社のテレビCM分析に特化していたのに対し、ノバセルトレンドは競合他社も含めた、全てのCM効果を見える化する。

 注目したのが「指名検索数」という指標だ。CM放映時間の前後3分で、企業名や商品名の検索数がどれだけ増えたかという「瞬間指名検索増分」を、大手検索エンジンと共同で計測する仕組みを開発。自社と競合ブランドのCM放映量や検索スコア、地域やテレビ局、曜日時間帯、番組ごとの放映効果を比較できるようにした。

「ノバセルトレンド」は競合他社を含めて全てのCM効果を分析できる
「ノバセルトレンド」は競合他社を含めて全てのCM効果を分析できる

 これまで知るすべもなかった競合企業の広告効果を、誰もが把握できるよう丸裸にしたという意味ではこちらも「マーケティングの民主化」につながる。ノビシロも、ノバセルトレンドも、今後半年間で100社程度の導入を目指す計画だ。

 運用型テレビCMのノバセルから、企業のマーケティング活動全般を支え“伸ばせる”プラットフォームへ。ラクスルの代名詞「安い、早い、ラク」の精神で、誰もが使い勝手のよいサービスへ進化を重ねる覚悟だ。

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