2021年12月18日。サッカークラブ、Criacao Shinjuku(クリアソン新宿)の丸山和大代表は名古屋市港サッカー場のピッチ上にできた歓喜の輪を見ながら、不思議と冷静だった。「この次にすべきことは何だろうか」
東京・新宿を拠点に活動するクリアソン新宿はこの日、FC刈谷(愛知)とのJFL・地域リーグ入れ替え戦に4-0のスコアで勝利し、日本フットボールリーグ(JFL)に昇格することが決まった。JFLはJリーグの下のカテゴリーに当たる。JFLでの成績やJ3クラブライセンスの交付などの要件を満たせば、J3リーグに昇格することができる。東京23区に本拠を置くクラブとして初のJリーグ入りを狙える位置まで来たことになる。



にもかかわらず冷静だったのは、「2026年に世界一のサッカークラブになる」と真剣に語る丸山氏にとってJFL昇格は通過点にすぎないという理由だけではない。
日本全国にはJリーグ入りを目指すサッカークラブが数多くある。東京都心部でも複数のクラブが「23区初のJクラブ」を目標に掲げる。スポーツチームとしてより高みを目指し、強くなろうとするのは当然だろう。その中にあって、クリアソン新宿は経営の持続可能性を強く打ち出している点に特徴がある。

多くのプロサッカーチームの運営はスポンサー収入で成り立っている。21年7月にJリーグが公表している「2020年度 クラブ経営情報開示資料」によると、J1~J3の56クラブの合計の営業収益1095億円のうちスポンサー収入が590億円を占める。
もちろん企業などがサッカークラブに価値を感じ、資金を投じることは何ら否定されるべきものではない。クリアソン新宿も不動産販売のアセットリードや整水器の日本トリムに活動を支えられてきた。22年3月には三越伊勢丹とコンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレーテッドが法人パートナーに加わった。
ただ丸山氏は、スポンサー収入に過度に頼る構造ではサッカークラブの経営を永続させることは難しいと考えている。大スポンサーやオーナーの意向でクラブの運営が突如として困難になるケースは過去にもあった。現在はロシアによるウクライナ侵攻の余波を受け、20-21シーズンの欧州チャンピオンズリーグを制したイングランド・プレミアリーグのチェルシーが岐路に立たされている。英政府が同クラブのオーナーであるロシア人富豪、アブラモビッチ氏の資産を凍結したためだ。
スポンサー収入に過度に依存しないという考えの下、株式会社Criacao(クリアソン)はサッカークラブを運営するクラブ事業以外に2つの事業を手掛けている。1つがアスリート事業、もう1つがキャリア事業だ。
アスリート事業では、研修やスポーツ教室などを設計・実施している。トップアスリートによる企業向けの研修や、保育園・こども園向けのスポーツ教室、ブラインドサッカー研修などを企画している。
キャリア事業では、企業と個人に向けた採用コンサルティングを行っている。特に大学の運動部などに所属する体育会学生のキャリア支援に力を入れている。体育会学生は競技に力を入れるあまり、就職活動などで後れを取ることも多い。そのため大学の体育会本部などと連携してセミナーを開催するなどして、約3000人の体育会学生にプログラムを提供した。また面接対策や自己分析などをサポートするサービスも提供している。
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