請求書の電子化や電子帳簿保存のサービスを提供するDeepwork(ディープワーク、東京・新宿)は、人工知能(AI)では読み取れない請求書のデータ化を、海外ではなく、あえてコストの高い国内で行っている。その背景には、同社を創業した横井朗社長の思いがある。横井社長に話を聞いた。
ディープワークは請求書の電子化に当たって、データの読み取りをすべてAIに任せることはしていません。なぜでしょうか。
横井朗社長(以下、横井氏):当社は受取請求書の入力、支払い、会計処理を自動化するサービス「invox受取請求書」を2020年3月から展開しています。また、請求書に限らずあらゆる書類の電子保存が簡単になる「invox電子帳簿保存」を21年10月から提供しています。
書類のデータ化にはAIを使ってはいますが、請求書には多種多様なフォーマットがあります。特に税率区分の記載方法は請求書によって大きく違い、AIだけで読み取るのが難しい。オペレーターによる確認で精度を上げています。

データを確認するオペレーターはコストの低い海外にいるのでしょうか。
横井氏:あえてコストの高い日本国内のオペレーターに依頼しています。日本国内で時間と場所に縛られずに成果賃金を得られる仕事をつくりたいからです。
日本は先進国の中で一人親世帯の貧困率が突出して高く、子どもがいる状態で離婚してシングルマザーになると6割が貧困になる社会です。その大きな要因の1つが、子どもがいて働く時間と場所が制限されると、まともな賃金を得られる仕事に就けないこと。かつて託児所付きのビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)オフィスが話題になりましたが、託児料を取られると手元に残るお金はわずかです。
AIがデータ化した結果を確認する業務は特別なスキルがなくてもできる。難易度によって単価は違いますが、一番簡単な工程でも時給1000円ぐらい、一番難しい工程だと1800円ぐらいになるように設定しています。例えば、1800円で月160時間働けば年収で350万円になります。
子どもが寝た後でも母親ができる仕事を
人のやりたくないような地味な作業を社会的弱者に押し付けているような気もするのですが。
横井氏:かつては誰もやりたくない仕事を立場の弱い人にやらせて申し訳ないと思っていました。しかし、あるお母さんに話を聞いて価値観が変わりました。
在宅勤務が可能な仕事でも、時間が自由とは限りません。例えば、電話でクレームを受ける仕事の場合、電話を途中で切れませんからクレームが長引けば子どもを保育園に迎えに行くことができません。インサイドセールスとして断られることを覚悟の上でひたすら電話する仕事もありますが、精神的にきつい。
こうした仕事が多い中、子どもが寝た後の時間も含めて本当にいつでもどこでもできる仕事は貴重だと分かり、日本国内のオペレーターに確認してもらう体制を続けています。
作業をする方はどのように探しているのでしょうか。
横井氏:お母さんたちの間で広がっていくことが多いですね。男性だとなかなか口コミでは広がりませんが、女性の口コミ力は大きい。知り合いに紹介された仕事だときちんとやってくださることもあって、口コミで徐々に広げています。
Powered by リゾーム?