従来の日本型経営が持つ良い部分を残しつつ、どう時代に合わない部分を改め、新しい良さや価値観を付け加えていくか。日経ビジネスLIVEでは9月28日、29日の2日間にわたり、「スモールビジネスから始まる『ネオ日本型経営』」と題したウェビナーを開催した。

 28日の第3セッションでは、経済産業省と東京証券取引所が選ぶ2020年の「DXグランプリ」を受賞したトラスコ中山の数見篤・取締役経営管理本部本部長兼デジタル戦略本部本部長と、DXによって成長を続けている水上印刷の河合克也社長が登壇。「コロナでも成長、カギはデジタルトランスフォーメーション(DX)」というテーマで議論した。その模様を収録したアーカイブ動画とともにお伝えする(構成:森脇早絵、アーカイブ動画は最終ページにあります)。

細田孝宏・日経ビジネスLIVE編集長(以下、細田):このセッションのテーマは「コロナでも成長、カギはデジタルトランスフォーメーション(DX)」です。ビジネスの世界で「DX」という言葉がよく聞かれるようになりましたが、実際に何をすればDXなのか、ぴんとこない人も多いのではないでしょうか。今回は、経営にDXを取り入れて成功した2社の経営者に登壇いただきます。

 まずは、機械工具の専門商社であるトラスコ中山の数見篤取締役です。トラスコ中山は経済産業省と東京証券取引所が選ぶ2020年の「DXグランプリ」を受賞されました。もうお一人は、販促物の企画や印刷を行う水上印刷の河合克也社長です。印刷業は構造不況業種といわれて久しいですが、水上印刷はDXによって成長を続けています。このお二人を講師に、どのようにして実りあるDXを実現するかを考えていきます。

数見篤・トラスコ中山取締役経営管理本部本部長兼デジタル戦略本部本部長(以下、数見氏):私は4年前、IT部門に異動しましたが、それまではビジネス部門で営業をしていました。ITは詳しくなかったのですが、知らないことが今の時代のDXには重要だと思っています。既成概念にとらわれず、IT、デジタル、経営、ビジネスを進めていくことが私のミッションです。

 当社は独創経営を非常に大切にしています。誰も挑戦していないユニークな取り組みを、他社に先駆けてやっていこうと考えています。そしてその実現には、デジタルの力が必要不可欠です。

強みは商品供給力

数見氏:当社のビジネスは、仕入れ先から工具や機械などの製品を調達し、お客様である小売業を通じて、最終ユーザーである日本の製造業にお届けするという流れです。強みは、プロツールなら何でも取り扱っていること。トラスコ中山に問い合わせれば、製造現場で使われている間接材や工具は何でもそろう。そんな会社を目指しています。

 中でも、商品の在庫を持つことを大きな強みにしています。全国の物流センターに440億円分、48万アイテムの在庫を持っています。一般的な流れからすると、「在庫をそんなに持っていていいのか」と思われるかもしれませんが、商品供給力こそが我々の強みです。

トラスコ中山取締役経営管理本部本部長兼デジタル戦略本部本部長 数見篤氏
トラスコ中山取締役経営管理本部本部長兼デジタル戦略本部本部長 数見篤氏

 一番大切にしているのは、在庫ヒット率です。お客様からいただいた注文のうち、物流センターからどれだけの商品をお届けできているか。これを当社のパフォーマンス評価の一番のバロメーターにしています。

 ただ我々は、DXという言葉をあまり使いません。どんな会社になりたいのか、どのようなサービスを提供したいのかを考えた結果、デジタルの力が必要であると気づきました。

 会社のトップが発したメッセージをしっかりと社内や社外に伝えながら変革を遂げることも大切です。会社の変革は、全員で遂行することが重要だからです。

 我々は、自社が良くなることだけでなく、それ以上に、メーカーや販売先、エンドユーザーの利便性を高め、業界全体や社会に貢献することを目指しています。

 DX実現の道筋を示す「DXジャーニー」の中で、現在は「DX2.0」という段階に入っています。これまではステークホルダーの皆様に、個別機能を提供してきましたが、DX2.0では、サプライチェーン全体を我々のプラットフォームと捉え、シームレスにサービスやデータを利用できる世界を目指します。

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 DXの先にはCX(カスタマー変革)があります。また、何より大事なことは、社員一人ひとりの変革です。これはDXの何倍も難しいのですが、だからこそ、この課題と向き合うことが大事だと思います。

 DX推進において一番大きなポイントは、相手の立場に立って考えることです。当社にはデジタル推進部という部署がありますが、推進部は、全国にある営業拠点のメンバーやその先のお客様の立場に立って考えています。

 我々は、DXによって人員やコスト削減を目指すわけではありません。社員一人ひとりが変化を楽しみ、自らの意思と力で挑戦していけるようになることが大切だと考えています。

続きを読む 2/4 提供する価値を変える

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