泊まり込みで入試を受ける人も

 本試験は4週間休みなしで続きます。(プログラミング言語の)C言語に関する課題を与えられ、他の受験生に自分の回答を評価してもらい、自分は他の受験生の回答を評価します。ネットで調べてもよし。友だちに聞いてもよし。キャンパス内では時折大音量で音楽が流れ、そのようなストレスフルな環境でもタスクをこなせるか試されます。学校は24時間開いており、寝袋やエアマットレス、テントを持ち込んで泊まり込みで課題に取り組む人もいます(というか学校側がそれを推奨しています)。

 さらに、学校は遠くから入試を受けに来る学生に対し、「帰りの電車や飛行機は3週目が終わるまで予約するな! 途中で脱落するかもしれないから、3週目を待たずに早く帰れるかもよ」と煽(あお)ってきます。

入学試験を受ける学生たち(2019年)
入学試験を受ける学生たち(2019年)

 2019年時点では応募人数は約4万人とのことでした。そのうちオンラインテストをクリアした3000人がキャンパスで入試を受け、最終的に1800人ほどが入学できます。

学習要領について

 エコール42の最大の特徴は、教師が1人もおらず、教科書もなく、授業もないことです。あらかじめ用意された課題を1つずつこなしていき、学生同士が互いに教え合い評価し合う「P2P(Peer to Peer)ラーニング」という方式をとっています。

 カリキュラムには学生が楽しんで取り組めるようゲーミフィケーションの考え方がちりばめられています。1つの課題をクリアするとロックが解けて次の課題に進むことができるようになっています。まるでロールプレイングゲームで1つの面をクリアするとレベルアップして次の面に進むかのような感覚ですね。そして次のステージは前のステージよりさらに面白く、挑戦的で、得るものが大きくなるようデザインされています。

 カリキュラムの構造は各ノード(結び目)が1つの課題になっており、クリアすると線でつながった先の次のノードに移ることができます。すべての学生は円の中心からスタートし、円の外側に行くにつれて難易度が高くなっています。「機械学習」「JavaScript」など、テーマごとに違う方向へ線が伸びていきます。

 私がエコール42で勉強する機会を得たのは、通っていたHEC Paris(フランスのビジネススクール)がエコール42と共同で開催している短期プログラムに参加したためです。このプログラムではエコール42の正規の学生と同じカリキュラムを体験してみるのが目的でした。私は「機械学習」のコースを選びました。課題は「ハリーポッターに出てくる組分け帽子をアルゴリズムで作成せよ」でした。

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