こんにちは。フランス発の機械学習プラットフォーム、Dataiku(データイク)という会社で欧州企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援している宮崎です。日本でAI(人工知能)など先端技術の教育を展開するzero to one(仙台市)のリサーチ担当もしています。

 本連載7回目の今回は、前回に引き続き、欧州のデータサイエンス教育の最新事情について話したいと思います! 

 取り上げるのはフランス発祥のITエンジニア養成学校「エコール42」です。同校は「教師なし、教科書なし、授業なし」という画期的な教育システムで大量のエンジニアを輩出しています。米シリコンバレーをはじめ世界各国にも展開しており、2020年6月には東京校「42 Tokyo」が開校しました。

 私が訪れたのはパリ北部のポート・ド・クリシー。中心部とは打って変わって古びて寂れた町並みが広がる地域です。メトロの駅から5分ほど歩くと、突如、周囲を漆黒のフェンスに囲まれた謎の建物が目の前に現れます。

 何やら、リュックを背負ったギークっぽい身なりの若者がひっきりなしに出入りしています。入り口で待っていると、「Bonjour, Ma-Ko-To」とC-3PO(映画「スター・ウォーズ」に出てくる金色の人型ロボット)のような声のアナウンス。ゲートが音を立てて開き、中に入るとそこには映画さながらの巨大なコンピュータールームが。

 この「スター・ウォーズ」を彷彿(ほうふつ)とさせる近未来的な建物こそが、ITエンジニアを輩出するための新しい教育システムを提唱しているエンジニア養成学校、エコール42です。

 フランスの格安携帯電話会社Free Mobileを創業したXavier Niel(グザビエ・ニール)氏が13年に立ち上げました。様々な産業がデジタル化を進めるにあたり、ITエンジニアの絶対的・慢性的な人手不足がボトルネックになります。そこでスキルの高いITエンジニアを多く世に送り出すため、エコール42が創設されました。

 私は18年にエコール42に3カ月間だけ在籍していました。この記事は2019年に再度キャンパスを訪れたときの情報をもとに、コロナ禍の状況も踏まえながら書いています。それでは、このエコール42のクレイジーな特徴について見ていきましょう!

入学について

 入学資格は特になく、18歳以上なら誰でも試験を受けられます。入学に必要な学位もありません(編集部注:東京校では21年5月から16歳以上に。ただし18歳未満はオンライン学習のみ)。プログラミングスクールですが、入学前にプログラミングの経験は全く必要ありません。高校を卒業したての若い人から、失業したため新たなスキルを身につけて再チャレンジしようとしている人、60歳超えの人など、学生のプロフィルは多岐にわたります。

 入学試験はとても厳しいことで知られています。まずオンラインでのテストで最初のセレクションが行われます。ここをクリアすると、エコール42の施設内で本試験を受けます。

続きを読む 2/4 泊まり込みで入試を受ける人も

この記事はシリーズ「元日経記者がパリでAIエンジニアになってみて」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。