こんにちは。フランスのパリにあるフランス発の機械学習プラットフォームDataiku(データイク)を展開する会社で欧州企業のデジタルトランスフォーメーションを支援している宮崎です。日本でAI(人工知能)など先端技術の教育を展開するzero to one(仙台市)のリサーチ担当もしています。

 今回で連載3回目となります。みなさんの中にも「AIを学んで仕事に生かしていきたい」と考えている方がいらっしゃると思います。ではどう学んでいけばいいのでしょうか? 今回は「どのようにデータサイエンスやAIを勉強したら自分にとって最もいいか」について考えていきます。

第1に考えるべきは自分の専門知識を生かすこと

 まず「データサイエンスのスキルを身に付けたい! (プログラミング言語の)RとPythonから始めるか……」と考えているそこのアナタ! ちょっと待ってください。プログラミングスキルなんて、正直あんまり大事じゃないです。

 データサイエンスは分野横断的なトピックです。物理、化学、生物、マーケティング、航空宇宙などいろいろなバックグラウンドを持った人が、それぞれ異なるキャリアパスでこの分野に入ってきています。私のようにジャーナリズムからの人も少数ですがゼロではありません。まさに、十人十色の世界なのです。

 出身はバラバラで、誰にでも当てはまるスキルの習得方法はないのです。ここで大事なのはいきなりRやPythonをやることではありません。自分の現在位置を把握し、ゴールを設定し、それを達成するには何が足りないのかを見極めることが最優先事項です。

 特にビジネスの面からデータサイエンスに飛び込もうとしている人は、自分の専門知識を生かすことを第1に考えるべきです。例えばマーケティング部門で働いている人は、「マーケティングに特化したデータサイエンティスト」になることが一番の近道です。金融機関で働くビジネスパーソンであれば「ファイナンスに特化したデータサイエンティスト」になるのが最も手っ取り早いです。

 ではデータサイエンスの知識の習得方法を知るための3ステップをご紹介します。

1:なりたい職種をググる

 まず「自分の目指す職種」をググって(ネットで検索して)みてください。例えばデジタルマーケティングが専門の人がデータサイエンスへのキャリアチェンジを考えているとしましょう。「Marketing data scientist jobs」「Senior marketing data scientist」「Senior data analyst marketing」「Marketing analytics specialist」などと調べてみるのです。そうすると人材募集の案件が山ほど見つかります。その中で気になる企業のものを開いてみましょう。海外の企業であればLinkedInで検索するのが一番よいです。

2:足りないスキルを把握する

 さて例えば「Senior data scientist finance」とLinkedInで検索をかけると、英国のフィンテック企業で日本でも事業を展開しているRevolutで次のような空きポジションが引っかかりました。

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 PythonやSQLなどのプログラミング言語が使えること、数学・統計学の高度な知識があることが求められています。また「あればなお良し」の欄には数学に関連する分野で修士号・博士号を持っていることや、不正・詐欺防止の領域で働いた経験があること、なども挙げられています。

 これを自分の今持っているスキルと比べて、「あまりにも遠すぎる」と感じる場合もあるでしょう。そのときは「senior」を外すなど、自分の持つスキルからさほど遠くないポジションが見つかるように検索し直してみてください。「data scientist finance」で検索すると、今度は暗号資産の売買プラットフォームである米Coinbase(コインベース)で空きポジションがヒットしました。

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 これらの募集要項を見てどう思うでしょうか? 私が抱いた印象は「データサイエンスの技術的スキルはもとより、それ以上に金融に関する知識が求められている」でした。

 いくつか募集要項を見てみると分かると思いますが、多くのデータサイエンティストのポジションでは「そのドメインの専門知識」×「数学・統計学の知識」×「プログラミングスキル」という3つの重なりが大きい人材を求めていることが分かります。下のベン図はデータサイエンス界隈(かいわい)でよく使われるものです。

 プログラミングスキルと数学・統計学の知識だけしか持ち合わせていない場合、データサイエンティストよりも「単に機械学習モデルが組める人」にしかなれません。モデルがもたらすビジネスインパクトについては考慮せず、モデルのパフォーマンスを表す数学的な指標を改善させることだけが目的の人たちです。

 ここで注意ですが、世の中には「機械学習エンジニア」という職種があります。機械学習エンジニアは「単に機械学習モデルが組める」以上の高度なスキルを求められます。データサイエンティストと同じく3つの領域が重なる位置に属しますが、機械学習の複雑なアルゴリズムにまで詳しく、かつ自分で実装できる能力です。モデルがもたらすビジネスインパクトについても考慮することが求められます。

続きを読む 2/4 プログラミングスキルばかり伸ばしてもダメ

この記事はシリーズ「元日経記者がパリでAIエンジニアになってみて」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。