オンライン教育プログラムの有用性

 Aの場合、私はこれからの日本はオンラインで学べる場をどんどんつくるべきだと考えています。私自身は海外の大学院に通いましたが、振り返るとカリキュラムのほぼすべてはオンラインでもカバーできるような内容でした。

理想的な大学でのカリキュラムの構造
理想的な大学でのカリキュラムの構造
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 上の図は大学で学ぶ場合の理想的なカリキュラムの構成で、下から上に向かって応用度が増していきます。このうち下の3段はオンラインで簡単に講座を組めます。最近は日本国内でもオンライン講座を提供する企業が増えてきました(私がリサーチ担当をしているzero to oneもその1社です)。また米国のオンライン講座プラットフォーム「Coursera(コーセラ)」など海外で大人気の講座も日本語版をところどころそろえてくれているのはうれしいことです。

 上から2段目の「データ付きビジネスケース」とは、MBA(経営学修士)の授業でよくやるビジネスケースと同じですが、企業が実際にプロジェクトで使ったデータも与えられるものです。データ解析や機械学習を使った将来予測を戦略立案のなかに盛り込みながらビジネスケースを解いていきます。これはグループワークで取り組む場合が多いですが、学生同士で時間を調整してもらえればオンラインで完結できます。

 近年はデータソン(ハッカソンのデータサイエンス版)をオンラインで開催する企業や学校が増えています。こうしたイベントをより多く開催することがデータ系人材の育成を底上げすることになるでしょう。

 オンラインの教育プログラムでは、投入するリソースを一定に保ちながら学生数を増やせるメリットがあります。受講生の学習進捗具合も管理しやすく、フレキシブルに最新の研究やトレンドもカリキュラムに反映できます。例えば、Courseraでは自然言語処理(NLP)のコースが人気です。OpenAIが開発し、近年話題になっている「GPT-3」という自然言語処理モデルの技術の基になっている論文「Attention is all you need」が発表されたのは2017年ですが、Courseraはすぐさまその内容に特化したプログラムをNLPコースの一つに追加しています。

 私自身も、実際に大学院に通っていたとはいえ、YouTubeに上がっている数々の動画に何度も助けられました。また、今は米ハーバード大学が提供しているCS50というコンピューター・サイエンスの基礎を学ぶ無料のコースを受講しています。

 こうしたスケールのしやすさや、カリキュラムを常に最新の状態に保てることはオンラインの最大の魅力です。人材が足りていない今、大学での教育よりもオンライン教育を優先して増やすべきだと思います。

 オンライン教育への移行は企業でも進んでいます。私の勤務するDataikuは機械学習をコーディングなしで開発できるツールを販売しています。これまでは私のようなデータサイエンティストがクライアント企業に出向いて、8時間×3日間のような短期集中型でツールの使い方を手取り足取り伝えていました。

 2020年からはそれらをチュートリアル化してオンラインで公開しています。クライアント企業はこのeラーニングを受講することで、ツールの使い方を好きな時間に自分のペースで学ぶことができます。これによりDataiku側もクライアント企業の教育をスケールアップしやすくなりました。

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