データ解析のコンサルが「雨後のたけのこ」

 私がLinkedInなどを通して多くのアプローチを受けたことからもわかるように、コンサルティングファームはここ数年でデータ解析チームの強化に大きく投資しています。これは自社で集めたデータをどのように使ったらいいのか悩むクライアント企業のニーズが多いためです。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーは社内にマッキンゼー・アナリティクスというチームを発足させ、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)はBCG Gammaというデータ解析やAIに特化したチームをつくりました。東京にもGammaチームが発足しています。アクセンチュアはオーストラリア発データ解析ファームのAnalytics8を買収したり、AIモデルの構築やネットワーク解析を得意とする英国のQuantexaと資本提携したりと、他社を取り込むことで急速にデータ部門を強化しています。

 データ解析を強みとしたコンサルティングファームも次々と生まれています。欧州の採用市場ではArtefactやWavestone、Saegusなどの名前をよく聞きます。私は修士1年目の夏休みに運送業界のデジタル化プラットフォームを提供するShippeoという企業でインターンをしました。そこでもArtefactからのコンサルタントと一緒に長距離用運送トラックの到着時間を予測するAIの開発に取り組みました。データ戦略の部分をArtefactなどの戦略が強いファームに依頼し、実装部分はSaegusなどのエンジニア集団と一緒に開発する、といったやり方は近年よく見るやり方です。

 こうした後発ファームは人材難が深刻なようで、私のような卒業したての学生を積極的に採用しています。一方でマッキンゼーやBCGなど老舗ファームでは、ロンドン・ビジネス・スクールやHEC、INSEADなど著名なビジネススクールからデータ分析スキルのある人を採るのが一般的な採用手段といえるでしょう。

データ系人材のキャリアフォーラムが活況

 私が在籍したEcole Polytechniqueは毎年キャンパスでキャリアフォーラムを開いています。160社ほどが参加し、企業のブースはインターンシップやフルタイムの仕事を求める約2000人の学生でごった返します。参加企業はマッキンゼー、BCG、Palantir(パランティア)、BNPパリバやHSBC、ロスチャイルド、その他、エアバス、カルフール、LVMH、Booking.comなど。私が今働いているDataikuをはじめ、SpotifyやSalesforceなどスタートアップ系企業も40~50社参加します。理工系大学のキャリアフォーラムということもあり、これらほぼすべての企業がAI・データ系の人材を採用しています。

Ecole Polytechniqueでのキャリアフォーラム(2019年)。ゲーム会社などのスタートアップも積極的にデータ人材を雇いにきている。(写真:Jeremy Barande)
Ecole Polytechniqueでのキャリアフォーラム(2019年)。ゲーム会社などのスタートアップも積極的にデータ人材を雇いにきている。(写真:Jeremy Barande)

 このキャリアフォーラムですが、パンデミックの影響で20年はオンラインでの開催でした。各企業が人材を探しているポジションの一覧を提示し、学生は興味のあるポジションについて、人事担当との15分間の面接枠を予約できる仕組みです。Ecole Polytechniqueで私が修了した同じプログラムを現在受講しているインド出身のアキーラ・ヴァンガラさんは、「オンライン開催の方が効率的に企業を回れていいと感じた」と言っていました。

 またヨーロッパではこのようなデータ系の人材探しのために企業が一堂に集まるイベントが非常に盛んです。そのうちの一つ、DATAJOB(*3)は定期的にパリやリヨン、トゥールーズで開かれ、毎年数千人の学生が参加しています。DATAJOBは医療、防衛といった産業別のフォーラムも開いており、志望業界が決まっている学生にとって企業にアプローチしやすい場となっています。他にも、スタートアップに特化したネットワークイベントのVivaTechなどがあります。

 今回はAI人材の不足について、その中身を詳しく見てみました。また人材不足の渦中にいた学生という視点から、企業の採用意欲や学生へのアプローチの仕方を紹介しました。次回は人材不足の中、企業やAIを仕事にしたい方がとるべきアクションについて書きます!

この記事はシリーズ「元日経記者がパリでAIエンジニアになってみて」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。