現場経験ゼロでも毎週届くスカウトのメッセージ

 企業がAI人材の不足にあえいでいる状況は私も肌で感じました。修士課程も2年目に入り本格的に就職活動を始めた19年、自分のLinkedInのアカウントには、企業の人事やデータチームから少なくとも毎週1通はスカウティングのメッセージが届いていました。まだ現場経験ゼロの赤ん坊にもかかわらず、です。

 私はエンジニアの学校とビジネススクールの2つを卒業したので、データ解析に特化した大小のコンサルティングファームから多くのアプローチを受けました。多くはフランスの企業でしたが、英国やスウェーデン、スイスやドイツなどの企業からも接触がありました。参考までに、その例を載せます。

(要約:我々のデータサイエンティストの仕事に興味があるかと思って連絡しました。数学に強く、問題解決のために新しいアイデアを実行に移すのが好きな人、リアルタイム、オンライン教育、ビッグデータに興味がある人向けです。スケールの大きな機械学習・ディープラーニングのプロジェクトに取り組んでいただきます。)
(要約:我々のデータサイエンティストの仕事に興味があるかと思って連絡しました。数学に強く、問題解決のために新しいアイデアを実行に移すのが好きな人、リアルタイム、オンライン教育、ビッグデータに興味がある人向けです。スケールの大きな機械学習・ディープラーニングのプロジェクトに取り組んでいただきます。)
(要約:我々のクライアント企業へコンサルティングするため、データマイニングとデータエクストラクションのスキルを持った人を探しています。多文化な職場で、グローバルなプロジェクトに英語で取り組みたい人向けです。フランス南部、ソフィア・アンティポリスが職場。興味ありますか?)
(要約:我々のクライアント企業へコンサルティングするため、データマイニングとデータエクストラクションのスキルを持った人を探しています。多文化な職場で、グローバルなプロジェクトに英語で取り組みたい人向けです。フランス南部、ソフィア・アンティポリスが職場。興味ありますか?)

 余談ですが、前職が新聞業界だった自分には、これが非常に新鮮でした。今のご時世、採用を増やしている強気の新聞社はほとんどありません。新卒の就活時も入社後も新聞社から積極的に採用のアプローチを受けたことはありませんでした。

 私はフランスに留学するまでプログラミングの経験がなく、数学も好きとはいえ決して得意科目の一つではありませんでした。2年間データサイエンスを勉強したところで急にAIエンジニアに転身できるわけがなく、スタートラインにようやく立てたばかりでした。

 記者の経験からコミュニケーション能力こそ自信がありますが、自分自身でモノを売ってお金を稼ぐビジネスの経験をしたことはなかったので、ビジネスとの橋渡し役としてもまだ中途半端。それでもこれだけ企業からアプローチがあったのです。どれだけ人材が足りていないのかがよくわかります。仕事を始めた今現在でも、週1度の頻度でスカウティングメッセージを受け取っています。

 ちなみに日本ではLinkedInがあまり使われていないためか、日本企業からのアプローチはゼロでした。FacebookやUberなど外資系企業の日本支社とコネクションがあるヘッドハンターからのアプローチは多少ありました。

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