国内で世界のエキスパートと触れ合う

 日本政府は海外からの外国人受け入れを積極的に推進していました。ラグビーW杯などの世界的なスポーツ・イベントのために来日する観光客や、日本での買い物や「経験」を求め、アジアを中心に一大ブームとなっているインバウンドの旅行者があちこちで見られました。現在は新型コロナウィルス感染症の拡大で国境を越えた人の移動は制限されていますが、収束した後には外国人受け入れを再開するはずです。海外の人が困っているような様子が見えたら、すぐ声をかけてみる、気軽に話しかけてみるといった機会も増えてくるでしょう。

 また人材の絶対量が不足していることから、入管法も改正され、地方にも多くの外国人が働きに来ることが予想されます。こうした状況は、「気楽に声をかける、答える、質問する」ためにまたとない機会です。また国際会議の招致も各都市が積極的なことから、かなりの数のいろいろな分野の専門家とホテルなどで遭遇する機会も増えてきています。

 会議の中には一般に公開されるものもありますから、自分が興味を持っている分野なら、会議の場所や日時を調べてどんどん行ってみてはいかがでしょうか。その気になればエキスパートに直接触れることができる機会はどこにでも転がっているのです。

将来はもっと良くなる

 私は元から社交的だったわけではありません。大学時代に交換留学で初めて米国に行った時、誰もが「あなたはどう思うか?」(What do you think?)と聞くのにどう答えてよいかわからず、最初は途方にくれていました。しかし、専門家の意見を聞いているわけではなく、私がどう思ったか、どう感じたか、好きか嫌いか、という簡単なことを尋ねているのだと次第に気がつき始めました。

 特に初めての留学だったので、英語があまりわからず、クラスが終わると毎回先生に「宿題は何か」と聞いていたのですが、聞けば親切に教えてくれるという経験をしたので、わからないことは何でも質問したほうがよいと学びました。こうしたコミュニケーションの取り方から、少しずつ社交性を身につけてきたような気がします。

 質問や意見はすればするほど、失敗もしますが、コツもわかってきます。何も言わないといつまでたってもどうしたらよいかわからず、力がつきません。また質問にしろ、意見にしろ、大げさに考えないことがポイントです。そうすれば頭が柔らかくなり、その場に応じていろいろなアイデアやジョーク、そして議論が行き詰まった時に場の雰囲気を変えるユーモアのセンスも磨かれるようです。

 誰でも自立した個人として扱う、その意見に耳を傾ける、そしてわからないことは誰にでも聞く――。米国をはじめ世界とのコンタクトで知った、この「姿勢」は、自分の人生は自分自身で生きているという実感や認識につながります。

 どんなことが起こっても、自分の人生として前向きにとらえる、常に新しいことを求める、将来はより良くなるはず(Best is yet to come.)という私の基本姿勢は、こうした経験から生まれたのかもしれません。

たまたま隣に座った人との会話が、その時抱えている課題の解決につながることも(写真:fizkes/Shutterstock)
たまたま隣に座った人との会話が、その時抱えている課題の解決につながることも(写真:fizkes/Shutterstock)
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この記事はシリーズ「世界で活躍するデジタル庁トップの小さな習慣」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。