
中央銀行の金利引き上げに対する揺るぎない決意は、実に驚くべきものだ。インフレを抑えるという名目で、意図的に景気後退を引き起こす、あるいは不況になった場合に悪化させる道を選んでいる。さらに、彼らは自分たちの政策が引き起こす痛みを公然と認めている。たとえ、その痛みを負担するのはウォール街の友人たちではなく、貧しい人々や疎外された人々であることを強調しないまでもだ。そして、米国では、この痛みは不当に有色人種の人々に降りかかることになる。
私が共著で発表した米ルーズベルト研究所の新しい報告が示すように、金利主導のインフレ抑制がもたらす利益は、そうしなくてもどのみち起こるであろうことと比較すれば、ごくわずかだ。インフレはすでに緩和されているように見える。
1年前(ロシアのウクライナ侵攻前)に楽観論者が期待したほどではないかもしれないが、それでも緩やかになっており、楽観論者が展望していたのと同じ理由で緩和している。例えば、コンピュータチップの不足によって引き起こされた自動車価格の高騰は、ボトルネックが解消されるにつれて低下するはずだった。その通りで、自動車の在庫は増えている。
また、楽観論者は原油価格が上がり続けることはなく、下がるだろうとも考えていたが、まさにその通りになった。実際、再生可能エネルギーのコストが低下していることから、長期的な原油価格は現在よりもさらに下がると思われる。
私たちがもっと早く再生可能エネルギーに移行しなかったのは残念なことだ。化石燃料の価格変動からもっとうまく隔離され、ロシアのプーチン大統領やサウジアラビアの戦争好きな、ジャーナリスト殺害に関与した疑いのある指導者、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(通称MBS)のような、石油国家の独裁者の気まぐれにもずっと影響を受けづらくなったはずだ。
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