新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、人の働き方や企業のあり方が大きく変わった。リモートワーク、デジタル化、男女数のバランスなど、経営者は複数の課題と向き合いながら、柔軟に組織変革を進めていく必要がある。第24回日経フォーラム「世界経営者会議」で来日したスイスのビジネススクールIMDで学長を務めるジャン-フランソワ・マンゾーニ氏に、ポストコロナ時代の組織のあり方について聞いた。

「理想のリーダー像」は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前後で変わったと思いますか。
IMDジャン-フランソワ・マンゾーニ学長(以下、マンゾーニ氏):変わったと思います。パンデミック以降、テクノロジーを駆使してテレワークをするようになりました。人と人の間に距離がある中で、リーダーにはチームの足並みや、士気、組織文化をどのようにそろえるかという新たな課題が突きつけられています。
パンデミックが収束した後は、テレワークと出社のハイブリッドになるでしょう。テレワークでは通勤に費やす時間と労力がなくなるし、勤務時間が柔軟できるというメリットがある。さらに、職場と違って誰かに話しかけられて、仕事の邪魔をされることもないから集中しやすい。例えば私も、オフィスに来ていただくのはうれしいのですが、6人連続で来られるとあっという間に2時間くらいたってしまいます。
ではテレワークと出社のバランスをどうするか。IMDでは、テレワークは週に3日までと決めました。それぞれに働き方のニーズがありますから、まずは上司と相談する。バランスの取り方はすぐに答えは出ないでしょうが、賢い企業はちょうどいい着地点を見つけると思いますよ。
足並みをそろえるためにリーダーにできることを教えてください。
マンゾーニ氏:3つあります。まず、今まで以上に個人間のつながり、チームメンバー同士のつながり強化を意識すること。リーダーは、オンラインで個人的に連絡を取ったり、チームで大切なトピックについて議論したりする時間をつくらなくてはなりません。
次に、「計画的ではない交流」をすること。これは距離があると難しいとは思いますが、「○時に会議」ではなく、無計画なおしゃべりの時間は確保すべきです。テレワークでは、フラッと立ち話ができない。しかし、ちょっとしたおしゃべりが、メンバーの足並みをそろえる上では重要なのです。
最後は、やはり対面で会うことです。そして会うときは、ある程度の時間を一緒に過ごしましょう。ある企業のCEO(最高経営責任者)は、対面で会議をするとなったら、1~2週間は一緒にやります。頻繁には会えないでしょうが、何日かちらほらと会うのではなく、しっかりと時間をとって交流し、取り組むべき課題の根底までとことん詰めるべきです。
デジタルは便利ですが、対面と同等ではありません。対面の作業が不要になったとは思わない方がいいでしょう。ここ数カ月、IMDでは、「オンラインで多くのことができるけれど、対面で会えたらそれはそれで最高」と伝えています。
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