図3は主要なグローバル産業について、同様に地理的集中リスクを量と頻度という2つの側面から捕捉している。図中、数字/アルファベットは産業部門コードであり、国名との組み合わせで特定の国のサプライチェーンを指し示している。横軸はハイリスク国が製品の付加価値源泉国として占めるシェア、縦軸は生産システムの中でサプライチェーンが同国産業を経由する頻度である(赤線は単純回帰線)。

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 2つのグラフを比較すると、日本より中国のデータで、右上方向への分散が大きい。分析対象のサプライチェーンは、概して日本より中国で地理的集中が起こっていることが分かる。一方、左側の日本のケースについて見ると、台湾だけが強い集中度を示しており、その対日依存の高さが見て取れる。

 中国のケースで、各サプライチェーンの単純回帰線に対する位置関係を見ると、米国・ドイツ・日本といった先進国と、韓国・台湾など新興経済との間で、集中リスクの性格が異なることが分かる。先進国のサプライチェーンは主に回帰線の上側、対して新興経済のサプライチェーンは回帰線の下側に集まっている。つまり先進国では、もっぱら量的な集中よりも頻度による集中が起こっており、新興経済についてはその逆の傾向が表れている。

 その背景として、先進国は比較的大きな国内市場と産業基盤を有しており、一般的に外国源泉の付加価値は途上国と比べて小さくなることが知られている。また、先進国には多くのグローバル企業があり、それらは複雑で長いサプライチェーンを世界的に展開しているため、ハイリスク国に対する露出頻度も必然的に高くなることが考えられる。

最も中国リスクにさらされる韓国と台湾

 最後に、「コンピューター、電子・光学機器」部門に焦点を当てよう。韓国と台湾のサプライチェーン(韓国_26, 台湾_26)が、付加価値源泉シェアと通過頻度の両方において、中国への地理的集中リスクに最もさらされていることが分かる。

 また、米国の「コンピューター、電子・光学機器」部門(米国_26)は非常に興味深い立ち位置にある。対中国の低い付加価値源泉シェアは、単純に、米国の経済規模と、あるいは「サプライチェーンの低付加価値部分だけがオフショアリングされる」という古典的な命題の表れなのかもしれない。一方で縦軸方向、すなわち中国の国内産業を経由する頻度の高さは、中国における不測の事態にさらされる確率の高さを示しており、米国サプライチェーンの脆弱性がうかがえる。

 この図にあるように、一般的に、量ベースと頻度ベースの集中リスクは正の相関にあるが、上述した米国サプライチェーンの事例を考えると、量的な側面だけを見ていては全体リスクの過小評価につながりかねないことが理解できる。サプライチェーンの集中リスクを「量」と「頻度」の二軸で測るという視点が今後、企業経営や政策立案の現場に応用され、広まることを期待したい。

 *本稿は共著論文「Inomata and Hanaka (2021)」の内容をベースに執筆した。共著者である名古屋大学大学院情報学研究科の土中哲秀氏に謝意を表したい。

■参考文献
『グローバル・バリューチェーン――新・南北問題へのまなざし』(猪俣哲史、日経BP、2019年)
Inomata, S. and Hanaka, T. (2021), 「A Risk Analysis on Geographical Concentration of Global Supply Chains」 Discussion Paper Series No. 828, Institute of Developing Economies, JETRO.
*本稿の内容は筆者の私見に基づくものであり、日本貿易振興機構(ジェトロ)の見解を表するものではない

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